二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

永遠の眠り姫、 (進行方向不明中!) ( No.59 )
日時: 2012/07/01 13:47
名前: 舞雪 (ID: 6kwRIGzI)

(2)理想郷は失敗でした













( なんて言えばいいのかな、今なら信じられるかもしれない )


悪魔にでさえ助けを乞うほどに俺は心から腐りきっていた。






 *





「———魔法が見える輩、か・・・それは面白い」

「何が面白いんだよ、そんな奴がそこらへんに居たら俺は消されてしまうんだぞ!? 違うか!?」



立ったまま必死に言及する真翔に対し、椅子に頬杖をつき真顔で彼を観察する豪炎寺修也。
二人の真上で七色のステンドガラスが鈍く輝く。
沈黙はしばらく続き、先にそれを破ったのは———真翔の攻撃的な視線に耐えかねた聖帝のほうだった。



「・・・おまえにはつくづく呆れさせられる」



大きく溜め息をついて姿勢を正す。小さな硝子テーブルに伸ばした手に掴んだグラスの中で、氷の音が季節外れの涼やかさを醸し出した。



「おまえだけじゃない、この国もそうだ。俺は俺の理想郷を創り出そうとしたが失敗だった。・・・やっぱり千宮路が正しかったのか?」



誰に言っている風でもなかった。
グラスを持ったままふいに立ち上がり歩き出した豪炎寺から目を逸らすように、真翔は俯く。



「大人という種族は常に自分の利益のことしかあたまにない。子供の頃の理想でさえ追い求めない」




彼が部屋の中央まで来たとき。
大理石の床に描かれた紋章から波打つように光が溢れ、其の他の光が一瞬にして失われた。
異変に気づき顔を上げた真翔が、今現在、魔法が発動されていたことを解ったのは、少女の姿が形作られた後。




「そのとおり、大人は信じられません———実に正論ですね、」


ひざまづいた形のままにこと微笑んだ少女はゆっくりと起立し敬礼した。
腰紐につけられた可愛らしい彼女には似合わない短剣がカシャと鳴り響く。



「相原沙耶、ここに」


「・・・よく戻ってこれたな。円堂を取り逃がしたというのに?」

「黙っていただけますか真翔さん」



凛とした声が真翔を抑え付ける。
その会話ともいえぬ会話が面白かったのか、豪炎寺は懐かしげに笑みを浮かべた。
あからさまにムスッとした様子で沙耶は続ける。



「真翔さんが言うように円堂守の確保には失敗しましたが、第一の事件の犯行現場は掴めました。聖なる森です」


そのムスッとした様子とはまた別に、ぎゅっと握り締められた拳。
爪は傍から見ていても痛々しい程に掌に食い込んでいた。
やはりそうか、と眉根を寄せる聖帝。
瞼を閉じ、次に開けるとき、彼の口から命が下される。
“仰せのままに”———敬愛する人の目をしかと見つめながら沙耶は自分に言い聞かせるように呟いた。





「霧野とともに聖なる森へ行け。そして、ここ一連の事件の犯人を捜してこい」