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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 夢と幻の眠り姫...... ( No.6 )
- 日時: 2012/02/25 12:57
- 名前: 永夢 雪華 (ID: W5kIcvv2)
◇真紅に染まる最後の楽園
少年は闇のなか森を彷徨っていた。
夢現(ゆめうつつ)に。
“わたしと遊んでくれないかな?”
あの少女が忘れられない。
生気の無い瞳、蒼白い肌に囚人服のような真っ白い衣服をまとった少女が。
木漏れ日が揺れる、とある初夏の早朝。少年はおぼろげにしか思い返すことができないのである。
<夢とも幻ともつかぬ、惨めな虚空>
いつも一人ぼっちだった。
そもそも、自分の前を走り抜けていく子供はもちろん、誰も信じる気は無かった。
どうせ裏切られるんだから。
どうせ弄ばれるだけなんだから。
「人間不信、って言うんだってな、こういうの。」
広大な孤児施設の庭の隅、誰も寄り付こうとしない森の入り口にて少年は呟く。
そう、いつも一人ぼっちだった。友達というモノも居ず。
言葉を返してくれる人間も、居ない『はず』だった。
「人間不信、って言うんだよ、そういうの。」
その鉄則を破ったのは神々しい天使。
少年が見たことも無い美しい顔立ちと、知るしかない優しい心をもっていた。
“人間のいかに愚かなことか。”
二人を繋ぐのは終わることを知らない評論会。
そんな日常も、いつかは終わりを告げるものなのだ。必然的に。運命のルーレットというモノに従って。
「わたし、もう此処には来ないの。」
「なんで?」
「ちょっと、ね。」
少女は意地悪く微笑む。
「でも森にいるから。君が来るの、待ってるよ。」
あれから幾日経ったのだろう。
少年は中毒者の如く、少女を強く想う。
支えを失った少年の心が安楽を求めた先は———、
「来てくれたんだ。わたし、ずうっと待ってたんだよ?」
森の奥。闇の奥。其処にたたずむのは<最後の城・ラストキャッスル>。
“さあ、わたしたちと遊びましょう?”
「———マサキくん。」
真紅の薔薇が咲き誇る庭園に、また新たな<悲惨>が加わった。
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