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【プロローグ】

つ、くら、ん？

そう、君の名前。月藍。

良い名前だね！ありがとう。

喜んでくれてよかったよ。名前が無いって言うから。

あったと思うんだけど、忘れちゃった。誰も、私の名前を呼ぶ人はいないから。

そっか。じゃあ、僕が沢山呼んであげる。君の名前。

…うん！

幸せ、だった。楽しかった。そんな毎日が過ぎていった。

——でも、幸せとは、いつかサヨナラしなくちゃいけない。——

いい？ここから出ちゃダメ。

ここは廃墟。誰も来ない。君以外は。

どう、して？

君は、月のような金色の瞳に、藍色の髪。異人と見られて、殺されるかもしれない。

…うん。わかった。

じゃあね。

じゃあね。

君と最後に交わした言葉。



あれから、もう何年経ってるだろう。ここから出てみる？外は一体どうなってるの？
出て…みようか？
自問自答。


赤い夕焼けが見える。今は何年？世界はどうなっているの？
疑問だらけの世界。答えてくれるのは、誰？

『あの…、今は何年ですか？』
『794年だよ』

794年…。
あの日の事を思い出す。

今は、何年なの？
問いかけた私に、微笑み君は、答えた。
97年。と。
君と出会い、別れ、約700年。

『そう、ですか。ありがとうございました』

君は、生きていないだろう。
あの時、言えばよかったかな…。
"ありがとう"って……。




今に繋がるまでの物語。私の、過去。