二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【REBORN!】白銀の風、黒の舞姫【リメイク中】 ( No.62 )
日時: 2012/10/09 19:56
名前: 月那 ◆7/bnMvF7u2 (ID: IsQerC0t)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs/index.php?mode

  標的1「風は、吹き続けている」


 風が、また吹いている。

 普通の人から思えば、いつものことなのかもしれない。けれど私の周りには常に風が吹いていた。気のせいかもしれないけれど。
 でも、今日の風はいつもと違う。ここに来てから、いつもより少し強く吹いている。

 ふいに目を閉じる。目を閉じれば、いつも思い浮かぶあの光景。部屋一面に広がるおびただしい血。床に倒れて、二度と起きない両親。そして、全てを焼き尽くそうとする、真っ赤な、赤い紅い炎。そしてそこに立つ私。それと、————。

 風が、私の頬を優しくなでた。まるで涙を拭っているかのように。

 「・・・うん、大丈夫。私はもう、泣かないから」

 思えばいつも傍にいてくれた風。私が生まれたときから傍にいて、笑っているときも泣いているときも辛かったときもずっとずっと傍にいてくれた。

 歩いていると、ある建物が見えてきた。見えてきたのは学校の校門、らしい。

  「やっと着いたー。ここが並盛中かぁ〜」

 私は3日ほど前までイタリアにいたから、日本の学校というものをよく知らない。ちなみに今は午前6時過ぎほど。転校しに来たので早めに来たのだ。いや、早すぎなんだけどね。
 ————日本の学校ってこんなのなんだ。
 思わずあちこち校舎を眺めてしまう。やっぱり朝早いので、教室には生徒一人も見あたらない。
 でも、

 「何で次の学校がここなんだろうなー。はぁ〜」

 ため息が出てしまう。別にここの学校じゃなくてもいいと思う。

 「まあ、『かぜ』が言ってたんだし、・・・しょうがないか」

 空を見上げると、よく晴れていて雲一つ無い。快晴だ。
 ————今日は良いことがありそうな予感がする。
 これから通う学校。土が乾き、風が吹くと砂埃の舞うグラウンド。青春の日々を過ごす校舎・・・。一通り全体を眺め終わると、

「さあッ! いっちょいきますか!!」

 そして私は校門をくぐり、一歩踏み出した。そして、————

「あいたッ!」

————石につまずき、こけた。


     ◆◆◆◆◆


————キーンコーン。と鐘が鳴った。ドア越しにイスを引いて席に着いている音がたくさんする。
 職員室であいさつを済ませ、私は今、これから過ごすことになる教室のドアの前煮立っていた。先に入っていった教師が私を呼ぶ。

「え〜、転校生を紹介する。キミ、入って」
「は〜い」

教室に入ろうとする。生徒達の目線が集まってくるのを肌で感じる。めんどくさいな。そう思い、つい早足になってしまい————

「あいたッ!」

こけた。扉につまずき、豪快に。

 「おい、キミっ! 大丈夫かね」

 教師が心配してくれた。これには笑顔で応えねばならぬまい。

「あいたたた・・・・・・あ、はい、まあ」

 教師に笑顔を向け、ふと、静かになった教室を見渡す。すると、クラス一同、口をあんぐりと開けたまま
の状態で私を見ていた。
 ・・・ヤバイ。やっちゃった。
 急いで立ち上がって、シャツやズボンなど、汚れている箇所を払う。フードを被っていたので、顔はよく見えないと思うから、この真っ赤になった顔を見られなくてよかったと心底思う。

 立ち上がったのは良いものの、何してんのコイツ・・・、という視線を痛いほど全身に感じていた。あぁ、死にたい。絶望の淵にたった私。すると、

「・・・じゃあ、名前を」

 こんな空気を変えるためか、教師が自己紹介の場を与えた。先生、ナイス! と心の内で親指をグッと立てる。
 次はないぞ、頑張れ自分。声を震わせないよう、気を引き締めて声を出した。そしてみんなを見渡しながら、

「えっと、名前は篠原。篠原り・・・・・・」

 言葉が、出なくなった。
 まさか、こんなとこにいるなんて。勝手に体が動き出し、足が彼女のもとへと向かう。また、みんなの視線が集まっているのを感じたが、今はそんなことどうでもよかった。

 彼女の席の前で足は止まった。すると、彼女————笹川京子を見ると、抑えていた感情が溢れ出し、みんなの前だと言うことも忘れ、

「キョーちゃァァ〜ん〜〜!!」

抱きついた。その反動で被っていたフードがとれる。

『なにィィィ!? !!』

これにはクラス全員が絶叫を上げる。京子も驚いていたが、ふと、つぶやく。

「・・・もしかして・・・・・・リン?」

名前を呼ばれ、彼女の顔を見る。

「やっぱりキョーちゃん、覚えててくれたんだ!!」
「うん、もちろんだよ」

京子は私に笑顔を向ける。ヤバイ、惚れそう。また感情の抑えがきかなくなり、思わず、

「ありがと、京子!」

そして、私は、京子の、頬に、
——ちゅ。
唇を当てた。

「な、なにやってるんだー!? あの転校生ッ!?」

 誰かの叫ぶ声がした。

 最初は、なんでそんなに叫んだりするんだと思ったけど、
 日本はハグとかキスとかをあまり人前ではしない。その常識を思い出すのはまだあとだった。


  〆 10月8日