二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【REBORN!】白銀の風、黒の舞姫【リメイク中】 ( No.65 )
日時: 2012/10/09 19:57
名前: 月那 ◆7/bnMvF7u2 (ID: IsQerC0t)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs/index.php?mode

  標的2「行動するときは、よく考えてから」


 「やっちゃった・・・・・・」

 やってしまった。転校早々にやってしまった。
 昼休みになった。自己嫌悪でこのまま屋上から飛び降りたいという気持ちで私の頭の中はいっぱいになり、授業に実が入らないまま、1日の半分が過ぎてしまった。
 柱に頭でもぶつけて記憶喪失になるか、いっそ。うん、それがいい。

 「リン、どうしたの?」
 「京子ォォォッ!!」

 私の、一人でうろたえている変な様子を見て心配したのか、京子が声をかけてくれた。あぁ、この子はマジで天使だ! 女神だ! そんな彼女に、おいおいと泣きながら私は抱きつく。

 「篠原さん、大丈夫?」

 声をかけられ、顔を上げるとそこには、黒髪のちょー大人っぽい人が立っていた。彼女の名前は黒川花。京子の親友だ。

 「うん、大丈夫・・・。あ、鈴でいいよ、黒川さん」
 「じゃあ、私のことも花でいいわよ」
 「うん。ありがとう、花」

 『友達』、になれたって思ってもいいのかな? 京子に話は聞いていたけど、すっごく大人っぽい。落ち着いてるし、お姉さん役なかんじがする。

 「それで?」
 「えっ」
 「いったい何悩んでるの?」
 「・・・・・・・・・それが、朝のHR(ホームルーム)のことで・・・」
 「あぁ、あれね」

 あ゛あ゛っ! やっぱり花も覚えてるか。そうだよね。あんな大声で言っちゃったしね・・・。

 「えっ、何かあったっけ?」

 どうやら京子の記憶には残っていないらしい。思い出させないようにそっとしてあげ————

 「ほら、あれだよ。鈴が沢田に————」
 「あぁぁぁぁ!!!! 言っちゃダメぇぇぇ!!」

 しかし花の言葉が聞こえていたらしく、「あぁ、あれのこと!」と納得する京子。
 ・・・ホントに何であんなことを言ったのか、タイムマシンにでも乗って過去をやり直したい気分だった。

 「はぁ」
 ため息しか、もはや出ない。


     ◇◇◇◇◇


 ——回想中——

「も、もう。やめてよ、リン」
「いーじゃん。久しぶりなんだし」

私からのハグとキスを、京子は本気で嫌がってはなさそうだった。いや、ていうか本当に拒絶されたら私死ぬよ?

「ほらそこ、イチャつくな。・・・篠原、前に戻って自己紹介の続きをしろ」
「は〜い」

先生に注意を受け、不満を抱えながらも私は黒板の前に戻った。戻る途中、周りのクラス一同が、ぽかんと見ているのと、嫉妬の目で睨んでいるのには気にしないでおこう。
黒板の前に立つと、ゆっくりと口を開け、言葉を紡ぐ。

「えっとぉ。名前は、篠原鈴。『すず』って書くけど、『リン』って読むから」ここで念押し。「・・・・・・もし、『すず』って呼んだ奴は・・・———殺すよ?」

そう言って私——篠原鈴は微笑んだ。しかし、微笑みの顔に一応、怒りも込めておいたからみんな気づいてくれるだろう。
みんなやはりびびっていたが無視。自己紹介を続ける。
 ————やっぱりアレ先に言っておかないと、あとで問題になるから言っておくか。

「あ〜、髪はこんな色だけど、別に染めてるわけじゃないから。ハーフだから、気にしないで」
「どこの国とのハーフ?」

クラスの誰かが言った。まあ、声からするにして男子だろう。
 私は素っ気なく「・・・イタリア」と、サラッと応える。
 すると周りから「だから、ハグやキスをしたのかー」「ハーフかっけぇー!」「獄寺君と同じじゃん」「ねぇ、篠原くんかっこよくない?」という、様々なざわめきが起こった。

 ————? ゴクデラ?
 周りを見渡すと、ひと目で分かる日本人離れしたその容姿。髪は銀髪。顔はイケメンだが、目は鋭く睨んでいる。あと、タバコを吸い、多くのアクセサリーを身に付けているところから推測すると・・・
 不良か。でもアイツ、どっかで見た、・・・いや聞いたことあるような。

 そんな思考をストップし、自己紹介に意識を集中させる。
 そして一応あれも言っておかねばなるまい。変な誤解が生まれても困るし。

「あ、ちなみに京子とは ———」

 そう言った瞬間、教室は張り詰めた雰囲気となった。皆、言葉を止め、私の次の言葉に耳を澄ませている。

「———“いとこ”だ・・・・・・」

から。と、言い終わる前に、教室中に「ヤッターッ!!」と歓声が上がった。もちろん、男子たちの。ほっ、と肩を落とすヤツもいた。京子、やっぱりもててるんだ。

「静かにッ」

先生の一声でシーンと静かになる。

「篠原の紹介はこれくらいでいいな。 えっと、じゃあ。篠原の席は・・・・・・沢田の後ろが空いてるな」

 先生が指差す方へ視線を向けると、そこには、くせ毛なのかツンツンとした茶色、いやオレンジに近い茶色の髪の毛をしたごく普通そうな男子がいた。サワダ、というらしい。
私はその方向へ歩き出す。ごく普通に歩いていった、つもりだった。
 が、サワダの机の脚につまずき、————ズドーンと転んだ。しかもまた派手に。ひたいを床に打ち付けた。血は出ていないけど、頭がくらくらする。
——グシャッ。と転んだときに何かをつぶした音がしたが、

「ちょ、大丈夫?」

サワダらしき男子に声をかけられた私はそんなことは忘れ、反応して起き上がる。

「ああ、大丈夫」下敷きにしてしまったカバンの中身をチェック。「大じょ・・・あぁァァッ!!」
「ど、どうしたの!?」

サワダが何か言っているが耳に入らない。カバンの中身が大変なことになっていたからだ。

「——が」
「えっ?」
「チョコがァァ!!!」

カバンの中では、まだ未開封の、休み時間にでもこっそり食べようと思っていたチョコレートが粉々に割れていた。“グシャッ”という音は転んだひょうしにチョコが砕けた音らしかった。袋からはみ出て、欠片になってしまった、『チョコレート』だったものがカバンの中に散乱していた。

 もちろん、これは私が自分でころんだので自業自得なわけだが、転んで頭を打ったせいか、気が動転していたらしい。こんな風になってしまっては、自分でも制御不能である。
 キッ、っと鋭い目つきでサワダを睨むと、先ほどより1トーン低く下げた声で、

「・・・サワダ、とか言ったな・・・」
「は、はいッッ!」
「覚えてろよ。このチョコの恨み、絶ッッッ対に、・・・はらすからな」

 このとき、サワダの顔が死人のように青ざめたのと、クラス一同が固まったのは、・・・言うまでもない。
 そして、このあとの記憶はない。ただ、数分後に自分がやったことを思い出し、前に座っているサワダを見ると、こちらの様子をちょいちょいうかがっては、目が合う度に前を向き、体を震えさせていた。

 ——回想終了——


  〆 10月9日