二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【REBORN!】白銀の風、黒の舞姫【リメイク完了!】 ( No.87 )
- 日時: 2012/10/16 20:24
- 名前: 月那 ◆7/bnMvF7u2 (ID: IsQerC0t)
- 参照: http://ameblo.jp/allen-riyunkio-exorcist/entry-11381124363.html
標的9「存在しない者の、名前」
「ふぉれで、なんでくぉくぉへくぃたのだ?」
はい、分からない人のために訳します。
『それで、何でここへ来たのだ?』
了平兄はこう言った。何でこんな風な言い方になっているのかというと、了平兄の顔を見れば、一目瞭然だ。
アザだらけ。しかも、ところどころ青くなっている。歯が少し欠けている。顔がパンパンに膨れあがっている。
これが今の了平兄の顔だ。何故こんな顔になっているのかというと、もちろん、異常な愛情表現にウザさを感じた私がボコボコにしたのである。まあ、自業自得だ。
「えっとー・・・。なんとなく?」
一応、了平兄の質問に答える私。
でもみんなは”なんとなく“では納得しないようだ。まあ、当たり前か。でも『風』が言ったって言っても納得しないだろうしなぁ・・・。
「・・・ていうのもあるけど!」無理矢理続ける。「ある人から、日本へ行けって言われたのもあるかな」
これは真実だ。先祖代々からの知り合いで、(ていうか知り合いって言うより、もはや『家族』?)その上の方、つまりお偉いさんのお爺ちゃんから言わ(命令さ)れたからである。
「”ある人“って?」
京子は聞いてきたが、絶対にその人のことは知らないため、
「言っても知らない人だろうから」
と言ってはぐらかしておいた。ゴメン。
「ところで鈴」
「ん? なに?」
了平兄が聞いてきた。何故か真剣な表情だ。いったいんなんだろう?
「・・・”アイツ“のことは、・・・もう、大丈夫か?」
・・・痛いところを突いてくる。気にしないでおこうと思ったのに。私は無理矢理笑顔を作り、
「・・・やだなぁ〜。もう4年も経ってるんだよ? だーいじょーぶだって!」
無理矢理明るい口調で言う。
それに、
「それに、・・・了平兄だって、つらいくせに」
事情を知らない沢田達はただこの様子を聞いていた。
了平兄もつらそうな顔をする。やめてよ、こっちまでそんな気持ちになっちゃうじゃん。
私は静かに後ろを向き、口を開く。
「”アイツ“・・・、『篠原仁』はもう、いない。どこかへ行っちゃったんだ」
前を見ると、京子が泣きそうな顔をしていた。分かってる、つらいのは私だけじゃない。京子や、了平兄だってつらいんだ。
私はふたりに向かって呟く。誰にも聞こえないように、ひっそりと。
『————ご め ん ね。』
だまして、ごめんね。
私は、胸にちくりと刺す罪悪感を抱えながら、逃げ出すように、ひとり教室へと向かう。
そのとき、ちょうど昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。校舎に木霊しながら、午後へと時間は進む。
◇◇◇◇◇
私には、生まれたときからずっとそばにいてくれる人がいました。
その人の名前は『篠原仁』。
私と同じ、琥珀色の瞳と髪をもった、
————たったひとりの、兄です。
その人との思い出は、あまりありません。
だって、その人がいつもそばにいることが、私にとっての
日常だったから。
ずっと、ずっとずっとそれが当たり前に、続くと思っていた。
————あの日までは。
でもその人はいなくなりました。
私の前から突然、姿を消しました。
その日から、私の日常は壊れました。
当たり前だったことが、全部違ってきたのです。
歯車はどんどんずれていき、
いつしか、『普通』を求めるようになった。
アイツのいない日々が、”日常“として続いていくのなら、
狂った世界で過ごしていくためにも、
『普通』の日々を求めるようになった。
私はいつしか本当の”私“を押し殺し、今の『私』を演じている。
でも、心の奥で、”私“はいつも泣いていて、ずっと呼んでいる。
『兄さん』
そう、呼び続けて、泣いている。
〆 10月16日