二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【REBORN!】白銀の風、黒の舞姫【標的9更新】 ( No.89 )
日時: 2012/10/17 13:34
名前: 月那 ◆7/bnMvF7u2 (ID: IsQerC0t)
参照: http://ameblo.jp/allen-riyunkio-exorcist/entry-11381124363.html


  標的10「理想を、求めて」


 『・・・ゴメンね、京子。嫌なこと思い出させちゃってさ』

 私は昼休みのことを京子に謝る。すると、

 『ううん、私はいいの。でも、・・・一番つらいのは、やっぱり鈴だと思うから。ごめんね。お兄ちゃんもきっと、そう思ってる』

 そう言って笑顔を浮かべる京子。だけどやっぱり、いつもの明るさがない。

 やだな、いつもみたいに明るく笑ってよ。じゃないと、私も笑えないじゃん。
 京子の笑顔を見ると、救われる。何でだかは分からない。けど、ほっとするんだ。ああ、
 ————『普通』だ。そう、思って。


     ◇◇◇◇◇


 その後の授業はいつも通り、明るい自分を演じた。誰にも弱みを見せないように。
 午前中と同じく、授業の合間の休み時間になるとクラスの人が集まってくる。

 「なあ、昼休み、どこにいってたんだよ」
 ・・・ちょっと応接室に。
 「ってことは、ヒバリさんがいるところ!?」
 んー、らしいね。会ってびっくりした。ホントにこわかったし。
 「やっぱ、篠原もヒバリさんには勝てないよなー」
 おい、それどういう意味だよ。
 「ちょっと男子! 篠原くんがかっこいいからって嫉妬してんのー?」
 「ち、ちげーよ!!」

 こうしてみんなとなんでもない会話を繰り広げる。大丈夫、私は『私』を演じきれている。
 ただ、あの後から沢田たちも深く聞いてこなかったけど。京子とも謝ってからはあまり話さなくなったから、花に「どうかした?」って聞かれたけど。


     ◇◇◇◇◇


 午後の授業は終わった。部活に行こうとする人の姿もある。

 ・・・帰るか。

 カバンに教科書をまとめ、席から立ち上がる。机と机の間を通り抜け、教室のドアをくぐって出て行こうとすると、

 「り、鈴! ちょっとまって!」

 後ろから沢田が私を呼び止める。

 「ん? なに? ツナ」
 「え、えっとぉ〜・・・」

 なんだか曖昧な感じだ。どうやら私を呼び止めたはいいけど、その後は考えていなかった、ってカンジだ。

 「う、うちにいるオレのいとこがさ、鈴に会いたいって言ってるんだ! だから、オレの家に来てくれない、かな・・・?」

 い、いとこが私に会いたいぃ〜? 嘘じゃないみたいだけど、何で沢田のいとこが私に会いたがるんだ?
 そう思ったが、

 「ああ、いいけど・・・」

 とかえす。すると沢田は安堵のため息をついた。


     ◇◇◇◇◇


 帰り道。沢田とふたりで歩いていた。

 「・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・」

 何故か会話がない。沢田が「え、えっとそういえばさー」と盛り上げようとしている。やっぱり沢田もあの時のことを気にしているのかもしれない。

 「気にしなくていいからな」
 「えっ?」

 突然言った私の言葉に、沢田は驚く。

 「昼休みの話。アイツ・・・私の兄がいなくなっただけの話だから。だからツナは、気にするなよな!」

 無理矢理笑顔を作る。そんな私を沢田は見つめてきた。

 お願い。言わないで。慰めたりしないで。そんなことされると、壊れてしまうから。

 「うん。わかった」

 沢田は何か悟ったのか、ただ、それだけ言った。

 「・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・」

 また沈黙。私は空気を変えるため、この際だから、とあのことを言ってみる。

 「————好きなんだろ?」
 「へっ?」

 「お前、京子のことが好きなんだろ」

 そういった瞬間の、沢田の反応は予想以上に面白かった。

 「え、えぇぇぇぇぇッッ!!! !?」
 と顔を真っ赤にさせ、近所に響くくらいの大声で叫んだ。

 「やっぱりか」


 『私』の顔は自然と、ニヤニヤと笑えていた。


  〆 10月17日