二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 刹那の欠片 【REBORN!】 リメイク ( No.13 )
日時: 2012/03/21 11:18
名前: 葵 ◆CTx8mbrkTA (ID: ZEuRnT3o)

 01話 命知らず来る!


————


 時と場所は変わり、日本……。
 朝、人々が既に会社や学校へ向かい終わっているであろう時間帯に、彼————沢田 綱吉は走っていた。
 皆からは沢田、またはツナ……一部でダメツナ、十代目と呼ばれている。
 彼は今朝もいつもの様に遅刻をして、今現在走っている途中である。
 そこがダメツナと呼ばれる所以だと思われる。


「リボーン! 何で起こしてくんなかったんだよ! 時計は止めるわ、起こさないわで……また遅刻するだろ!」
「俺の眠りを妨げるからだ」
「はぁ!?」


 走るツナの肩に乗りながら、リボーンは酷く冷淡に呟いた。
 それに反論するかの様に声を荒げるツナだったが、反論しようとする口はすぐに塞ぐ。
 どうせ反論を述べたところでリボーンが謝る訳でもあるまいし、むしろ逆に銃を向けられて謝らされるのがオチだからだ。
 そして、万一謝るなどという事をされれば、逆に気持ちが悪い。
 もし謝る事などあった時は、何かの前触れじゃないかとも軽く考えてしまうほどに、リボーンは人使いが荒い、と既にツナは認識していた。


「雲雀さんがいない訳ないし……っ! あぁああ、もうまた噛み殺される!」
「お前が噛み殺せば良いだけだろ」
「無茶苦茶言うな!」


 肩の上でのんびりとしているリボーンに悪態をつくつもりで言ったツナだったが、あっさりと無茶苦茶な事を言われて返されてしまった。
 アホなやりとりをしている内に彼は学校付近までやって来たらしく、気付けば遠目には校門が見える。
 周りにも遅刻者がちらほらといるのだが、殆どの生徒が青ざめた顔をしながら走っている。
 噛み殺されるのが嫌なのか、遅刻をした事が嫌なのか、と言われれば、圧倒的に多いのが前者である。
 命がかかっている……最早そうとも言えるであろう時、後ろからドンッと誰かにぶつかられ、ツナは勢い良く顔面から地面へ突撃した。


「いっつ……」
「ほんとダメツナだな。何だ今の転び方。あんな転び方、普通の人間なら出来ねぇぞ」
「もう分かってるから黙って下さいお願いします」


 転びの巻き添えを食わなかったのか、そしていつの間に移動したのか、リボーンはツナの頭の上で涼しげな顔をしている。
 それを憎たらしいと言わんばかりに睨み付けてから、ツナは誰がぶつかって来たのかを確認する為に目を向ける。


「……あれ、雪浪君!?」
「いったた……。あれ……ツナか」


 そこにいたのは、同じクラスの紀川 雪浪であった。
 ツナほどではないが、彼もまたツナと同じ様に理数系が大の苦手なところがある。
 2年になって初めてお互いの存在を知ったのだが、ツナと雪浪は妙に気が合ったので、それは以来は名前で呼び合う仲である。
 ツナは相変わらず転んでいる雪浪に手を差し出して、雪浪はその手を借りて立ち上がる。


「ツナもまた遅刻?」
「うん、雪浪君も?」
「おう…………って、こんな悠長な会話してる場合じゃない!」


 雪浪はツナの手を握り締めたまま駈け出す。
 もう遅刻している事は決定なのだが、少しでも早く行かねば、罰が重くなるのが確実だからである。
 ……だが。
 今日は、そんな事は大した意味を持たなかったかも知れない。


————いつにも増して雲雀さん不機嫌そうなんですけど!?


 校門前に辿り着いてようやくお目見えしたのは、明らかに不機嫌顔の並森最強と謳われる雲雀 恭哉だった。
 何故不機嫌であるのかはツナ達には分からない。
 勿論、いつから不機嫌であるかさえも分からないのだから当然と言えば当然だろう。


「……君達、遅刻とは良い度胸だね」


 ツナ達に気付いた雲雀が、一歩、また一歩とツナ達に近付いて来る。
 発される殺気に、ツナと雪浪は思わず狼狽えて数歩後退する。
 もう駄目だ、とツナは目を閉じ、雪浪は走馬灯を頭の中で駆け巡らせていた。
 瞬間だった。
 ツナと雲雀の間を、颯爽と駆け抜ける一人の少年————それに見覚えがあるのか、雲雀はそちらに目を向ける。


「久々、雲雀っ!」
「今日こそは君を……噛み殺す!」


 ここらでは命知らずと称される、ロキ・ライトルという少年だった。
 雲雀の大嫌いな黒曜中の生徒でありながら、何に興味があるのやら雲雀に絡む。
 とりあえず、強い人が好きらしいという噂がある。
 彼を追い掛けて、雲雀はツナ達などお構いなしで駆けて行った。
 残されたツナと雪浪は、お互いに顔を見合わせて、苦笑いを溢す他なかった。