二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 刹那の欠片 【REBORN!】 リメイク ( No.9 )
日時: 2012/03/01 16:53
名前: 葵 ◆m75LyNJ4TQ (ID: ZEuRnT3o)
参照: 自爆。

 00話 来る!


 暗い暗い路地裏の中、一人の女————黒山 夜————が静かに佇みながら、横目で大通りを視認する。
 先程依頼主に頼まれた通り、彼女は標的を抹殺して来たところである。
 が、運悪く警察に暗殺の一部始終を目撃されてしまい、現在はイタリア内を警察と鬼ごっこ中だ。
 誰かに目撃された時点で、最早暗殺でもないのだが。
 「はぁ」と溜め息を漏らし、肩を竦める。
 しばらくの間、警察が彼女を捕まえようと躍起になるに違いない事から、彼女は溜め息を漏らしたのだ。


————これじゃ……金が稼げない……。


 彼女は心底残念そうに、またしても溜め息をついた。
 彼女が殺し屋などという仕事に就いているのは、自分の生活の工面の為だ。
 真っ当な仕事では生活などしていける筈が無い、と踏んだ上で彼女は殺し屋という真っ当ではない仕事を選んだ。




____チャラララーチャーチャーチャッチャラー




 静かな路地裏に盛大に響き渡るのは、彼女のスマートフォンの着信音である。
 そして、それが某有名ゲームのバトル終了時に鳴る着信音だとしても、誰も突っ込んではいけない。
 ディスプレイを確認すれば、そこにはとても懐かしい名前が表示されていた。
 彼女はその名前に内心喜ぶも、その名前から電話が来るという事は特に嬉しい事でも無いという事で、表情自体は沈んでいた。
 だが、電話に出なければ、後々遭遇したりした時に殺されかねない。
 彼女は渋々電話に出ると、「久々だな」と微笑んだ。


『出るのおせーぞ』
「いや、5秒くらいしか経ってないんだが」
『電話の画面になったら0.5秒で取れ』
「無茶苦茶言うな」


 相変わらずのハチャメチャさ加減に彼女は苦笑しつつも、相変わらずこいつだけは変わらない、とも思っていた。


「で、お前から電話があるって事は……何か私に用だろう? 何だ……ある程度なら聞いてやっても良いが」
『……夜、お前……日本に帰って来るつもりはねーのか?』
「……はぁ?」


 少し悩んでから発された声は普段よりも弱々しい気がして、彼女は思わず声を上げた。
 遠くの方で、パトカーの音がした……気がした。


『どうせお前、今任務か何か失敗して困ってんだろ?』
「失敗はしてない……。が、警察には追われてる」
『だろうと思ったからな。……ちょっと話したい事もある。日本へ来い』


 多分今頃、電話相手はニッと笑顔を浮かばせてる筈だ。
 何故今彼女が仕事を少しヘマして警察に追われていると分かっているのかは謎だが……。
 有無を言わせない言い方に、彼女は少し悩んでから、「分かった……」と渋々返答した。


『日本行きのチケットは自分で買えよ。日本からはディーノの部下に案内させる』
「あぁ……。分かった、じゃあなリボーン」


 「じゃあな」と言い切る前に、ぶちり、と通話が途絶える。
 無論、相手が一方的に切っただけにすぎないのだが、相変わらずの傍若無人ぶりである。


「……日本、か」


 渋々了承したものの、彼女にとって日本に行くというのは古傷を抉る様なものだ。
 彼女はまたしても、「はぁあ……」と深い溜め息を漏らしたのだった。