二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- ハイスクールD×D 〜孤独の悪魔〜 戦い 見学1 ( No.10 )
- 日時: 2012/03/05 02:41
- 名前: 紙々の黄昏 (ID: do8LdMvC)
爵位持ちに下僕にしてもらった者が、主を裏切り、または主を殺して野良になるケースが極稀にあるそうだ。
悪魔の力は強大だ。人間の頃とは比べ物にならない。
その力は易く理性を壊す。自分の欲望に走る奴は当然出てくる。
そういった連中が主の下を去り、各地で暴れ回る。
そういった連中を『はぐれ悪魔』と呼ぶ
当然、連中は害を出す。発見しだい、消滅させることになっている。それが悪魔のルール。
これは、悪魔のみならず、天使、堕天使も同様だ。はぐれ悪魔を見つけしだい殺すようにしている。
制約を逃れ、野に放たれたものほど、恐ろしいものはないだろう。
オレが悪魔になったとき、悪魔になったことを魔法で誤魔化したのもこれが
理由だ。
オレは、部長、木場、朱乃さん、塔城、一誠と共に町外れの廃屋に来ている。
毎晩、ここではぐれ悪魔が人間を誘き寄せ、喰らっているそうだ。
今回、それの討伐の依頼が、上級悪魔から届いたらしい。
「リアス・グレモリーの活動領域内に逃げ込んだため、始末してほしい」ーーと。
これも悪魔の仕事の一つだそうで。
正直、面倒だ。
というか、はぐれ悪魔の始末なんてのは、人間だったときもやったことがあるわけで、悪魔になった今なら、むしろ片手間で出来ることだ。
「……血の臭い」
塔城がぼそりと呟き、制服の袖で鼻を覆う。
オレも嗅覚を強化して、嗅いでみる。確かに濃い血の臭いがした。10人、20人じゃきかないであろう血の量、でなければこんなに濃くはならない。
しかし、これでもオレは五感に関しては人間離れしていると自負しているんだが、そのオレが強化して漸くわかる距離だ。塔城も人間離れしていることは間違いない。いや、悪魔だけどさ。
それにしても、殺気、敵意、悪意が漏れすぎだ。これじゃあ「ここにいます」と自ら言ってるようなもんだ。三下臭しかしないぞ。
それでも一誠は足震わして、怖がってる。まあ、つい最近まで一般人だった奴からすれば、この程度の殺気でも十分恐ろしいんだろうが…。
「イッセー、閃霞、いい機会だから悪魔としての戦いを経験しなさい」
部長が一誠に無茶ぶりをする。
「マ、マジっスか!?お、俺、戦力にならないと思いますけど!」
そりゃそうだ。
「そうね。それはまだ無理ね」
部長はあっさり肯定する。あ、一誠が微妙に落ち込んだ。
「でも、悪魔の戦闘を見ることはできるわ。今日は私たちの戦闘をよく見ておきなさい。そうね、ついでに下僕の特性を説明してあげるわ」
「下僕の特性?説明?」
一誠は怪訝そうに聞く。
「主となる悪魔は下僕となる存在に特性を授けるの。……そうね、頃合いだし、悪魔の歴史も含めてその辺を教えてあげるわ」
いや、結構です。魔法球で自分で調べたんで。
簡単に言ってしまえば、大昔に悪魔、天使、堕天使の三つ巴の大戦争をした。
大勢の死者を出しながら、決着は着かず、泥沼化。三勢力とも大打撃を受けて、数百年前に漸く集結。悪魔勢は爵位持ちの大悪魔の部下の大半を失い、純粋な悪魔の多くが死んだ。だが、戦争が集結しても三勢力の睨み合いは未だ続き、少しでも均衡が崩れれば、また戦争が勃発するだろう状態。隙を見せれば危うくなる。故にーー。
「そこで悪魔は少数精鋭の制度を取ることにしたの。それが『悪魔の駒』ーー」
「イーヴィル・ピース?」
これはオレも知らない。部長が説明をする。
「爵位を持った悪魔は人間界のボードゲーム『チェス』の特性を下僕悪魔に取り入れたの。下僕となる悪魔の多くが人間からの転生者だからって皮肉も込めてね。それ以前から悪魔の世界でもチェスは流行っていたわけだけど。それは置いておくとして。主となる悪魔が『王』。私たちの間で言うなら私のことね。そして、そこから『女王』、『騎士』、『戦車』、『僧侶』、『兵士』と五つの特性を作り出したわ。軍隊を持てなくなった代わりに少数の下僕に強大な力を分け与えることにしたのよ。この制度が出来たのはここ数百年のことなのだけれど、これが意外にも爵位持ちの悪魔に好評なのよね」
「好評?チェスのルールがですか?」
好評、ねぇ…。
「競うようになったのよ。「私の騎士は強いわ!」「いえ、私の戦車のほうが使える!」って。その結果、チェスのように実際のゲームを、下僕を使って上級悪魔同士で行うようになったのよ。駒が生きて動く大掛かりなチェスね。私たちは『レーティングゲーム』と呼んでいるけれど。どちらにしても、このゲームが悪魔の間では大流行。今では大会も行われているぐらいだわ。駒の強さ、ゲームの強さが悪魔の地位、爵位に影響するほどにね。『駒集め』と称して、優秀な人間を自分の手駒にするのも最近流行っているわ。優秀な下僕はステータスになるから」
…………それでいいのか、悪魔。いや、別にいいけどさ。だが、ゲームの強さが地位に影響って、本当にそれでいいのか、悪魔。
「私はまだ成熟した悪魔ではないから、公式な大会などには出場出来ない。ゲームをするとしても色々な条件をクリアしないとプレイできないわ。つまり、とうぶんはイッセーや閃霞、ここにいる私の下僕がゲームをすることはないってことね」
「じゃあ、木場たちもそのゲームをしたことはないってことか?」
「うん」
一誠の質問に木場が頷いた。
なんというか、大丈夫か?悪魔社会。
ん、近付いてきたな。
「部長、俺の駒は、役割わ特性ってなんですか?」
「そうねーーイッセーは」
一誠の質問に、部長はそこまで言って止める。
どうやら、少し遅れて部長も気づいたらしい。敵意や殺気が強くなって、
漸く、一誠も気がつく。
「不味そうな臭いがするぞ?でも美味そうな臭いもするぞ?甘いのかな?
苦いのかな?」
相変わらず、悪趣味な姿だ。相手は暗闇の中にいて他の奴らには見づらいだろうが、人間離れしたオレの目にはしっかりとその姿が写し出されていた。
一誠はその声を聴いて怯えてる。
「はぐれ悪魔バイサー。あなたを消滅しにきたわ」
部長が言った言葉に反応してか、
ケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタ……。
異様な笑い声を出して、
ぬぅ……。
暗がりからゆっくりと姿を現す、上半身裸の女性。しかし、その体は宙に浮いている様にも見える。
ずんっ。
一誠が息を呑む。
姿を現したその姿はまさしく異形。
女性の上半身に様々な獣がくっついたかのようなバケモノの下半身。形容するには少々苦労するだろう。
両手には槍らしき獲物を一本ずつ。
下半身は四本足で、太く、鋭い爪がある。尾は蛇で独立して動いている。大きさは、5〜8m程、後ろ足で、立ち上がればもっといくだろう。
雑魚の典型だ。
「主のもとを逃げ、己の欲求を満たすためだけに暴れまわるのは万死に値するわ。グレモリー公爵の名において、あなたを消し飛ばしてあげる!」
「こざかしいぃぃぃぃ!小娘ごときがぁぁぁ!その紅の髪のように、おまえの身を鮮血で染め上げてやるわぁぁぁぁ!」
……これって言わなきゃダメなのか?雑魚相手に?問答無用で消し飛ばす方が早いと思うんだけど。