二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- ハイスクールD×D 〜孤独の悪魔〜 戦い 見学2 ( No.11 )
- 日時: 2012/03/05 02:42
- 名前: 紙々の黄昏 (ID: do8LdMvC)
「雑魚ほど洒落のきいたセリフを吐くものね。祐斗!」
「はい!」
バッ!
近くにいた木場が部長の命を受けて飛び出していく。けっこう速い。普通の奴なら反応すら出来ないだろう。事実、一誠は木場の動きに反応できてなかった。
「イッセー、閃霞、さっきの続きをレクチャーするわ」
部長が言ってくる。
イーヴィル・ピースの特性か。木場のピースはわからないが、特性は見てなんとなくわかったが。
「祐斗の役割は『騎士』、特性はスピード。『騎士』となった者は速度が増すの」
部長の言葉通り、木場の速度は徐々に増し、オレも少し目で追うのはキツくなってきた。亜光速くらいは出てるだろうか。バケモノは槍を振るって迎撃しようとするが、当然当たるわけもない。
「そして、祐斗の最大の武器は剣」
一度木場は足を止めると木場の手にはいつの間にやら西洋剣が握られていた。
剣を鞘から抜き放ち、長剣が月光を浴びて、銀光を放つ。
スッ!
再び亜光速で走り、バケモノの両腕、槍、胴体を両断する。そして次の瞬間、バケモノは絶叫する。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁああああああっ!」
切られた箇所はキレイにおさらばすると同時に血が噴き出す。
「これが祐斗の力。目では捉えきれない速力と、達人級の剣さばき。ふたつが合わさることで、あの子は最強のナイトとなれるの」
確かに凄いが、まだ完全に扱いきれてる訳じゃないな。あれくらいならオレでも出来る。
絶叫するバケモノの足元には、塔城がいる。
「次は子猫。あの子は『戦車』。戦車の特性はーー」
「小虫めぇぇぇぇぇぇっっ!」
ズズンッ!
バケモノの巨大な足が塔城を踏み潰す。
一誠は慌てるが、部長は自然体だ。なるほど、ルークの特性はーー。
ぐぐぐ……。
少しずつバケモノの足は持ち上がる。
「戦車の特性はシンプル。バカげた力、そして、屈強なまでの防御力。無駄よ。あんな悪魔の踏みつけくらいでは子猫は沈まない。潰せないわ」
グンッ!
完全にバケモノの足を持ち上げ、どかす塔城。
「……ふっ飛べ」
塔城は高くジャンプし、腹に拳を打ち込む。
ドドンッ!
バケモノの巨体が持ち上がり、後方へ思いっ切りぶっ飛ぶ。
流石にあれはオレにはムリだ。だが、オレはとある人を思い出していた。あの人なら可能なんじゃないかと思ってしまったのだ、あの気合いで大凡、なんでも、大体、適当に出来る公式バグキャラのあの人なら、と。いや、出来るだろう。昔、「適当に右パンチ!」とか言って、山の森を壊滅状態にしてたしな。
もう、人類じゃねえだろ。あれ。
だが、やはり、塔城もまだ無駄が多い。あれなら力じゃ負けるが、人間のときのオレでもなんとかなるな。
「最後に朱乃ね」
「はい、部長。あらあら、どうしようかしら」
ゾクリッ!と、オレの背筋を悪寒が走る。
あれはダメだ。オレにはわかる。あれはあの人と同類の人だ。あのケラケラ笑いながら、なぶるように、真綿で絞め殺すようにいたぶってくる、あの悪魔と同類だと勘が告げる。あれを思い出した瞬間、体中から冷や汗がダラダラ出てきて、身体が小刻みに震える。あれは拷問だ。いや、思い出すな。忘れろ、忘れるんだ。ふぅー。
ようやく、現実に戻って来た。
「朱乃は『女王』。私の次に強い最強の者。『兵士』、『騎士』、『僧侶』、『戦車』、全ての力を兼ね備えた無敵の副部長よ」
「ぐぅぅぅぅ……」
現実から離れているうちに朱乃さんは、バケモノに近づいていて、バケモノはその朱乃さんを睨みつける。だが、朱乃さんはそれを見て、不敵な笑みを浮かべる。
ゾクゾクゾクッ!
それを見て、オレには更なる悪寒が走る。ヤメロ。忘れろ、忘れるんだ。考えるな。
「あらあら。まだ元気みたいですね?それなら、これはいかがでしょうか?」
朱乃さんは天に向かって、手をかざす。
カッ!
その瞬間、雷がバケモノに落ちた。
「ガガガガッガガガガッガガガッッ!」
じゅぅぅぅ、と煙をあげる丸焦げのバケモノだったもの。
しかし、オレの勘がこの程度で終わるハズがないと告げる。
「あらあら。まだ元気そうね?まだまだいけそうですわね」
カッ!
再び雷がバケモノだったものを襲う。
「ギャァァッァァァァァァッァ!」
更なる雷撃、すでに断末魔に近い叫びだ。
だが、朱乃さんは更に三発目の雷を繰り出していた。
「グァァァァァァアアアアアッッ!」
雷を落とすその顔は、オレがよく知るあの人によく似た、冷徹で恐ろしいほどの嘲笑と愉悦の表情だった。
正直、震えが止まらない。
「朱乃は魔力を使った攻撃が得意なの。雷や氷、炎などの自然現象を魔力で起こす力ね。そして何よりも彼女は究極のSよ」
部長はサラリというが、オレはそれどころじゃない。トラウマに直撃して、只今、絶賛うつ状態だ。
ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ。
「普段、あんなに優しいけれど、一旦戦闘となれば相手が敗北を認めても自分の興奮が収まるまで決して手を止めないわ」
「……うぅ、朱乃さん。俺、怖いっス」
「怯える必要はないわ。イッセー、閃霞、朱乃は味方には、とても優しい人だから、問題ないわ。閃霞のことをとても気になると言っていたわ。今度甘えてお上げなさい。きっと優しく抱きしめてくれるわよ」
ビクッ!ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ。
「うふふふふふふふ。どこまで私の雷に耐えられるかしらね?ねぇ、バケモノさん。まだ死んではダメよ?トドメは私の主なのですから。オホホホホホホッ!」
ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ。
それから数分間、朱乃さんの雷攻撃は続いたという。
ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ。
はっ!オレは一体なにを?
オレが気がつくと、完全に戦意を失い、地面に突っ伏したバケモノに向けて、部長が手をかざしていた。
何があった?
「最後に言い残すことはあるかしら?」
部長が問う。
「殺せ」
バケモノから発せられたのはその一言だけ。
「そう、なら消し飛びなさい」
ドンッ!
部長の掌から巨大でドス黒く高魔力な魔力の塊が撃ち出される。
巨大な魔力の塊はバケモノの全身を余裕で包むと、宙に消えた。その時には、バケモノの姿も消えていた。
言葉通り、消し飛ばされたらしい。単なる魔力の塊の筈なんだがな。もともとそういう性質ってことか?
「終わりね。みんな、ご苦労さま」
部長が部員にそう言った。みんなも普段の陽気な雰囲気を生んでいた。
いつの間にか、はぐれ悪魔討伐も終わっていたらしい。はて、記憶が途中からとんでいるんだが、なんでだ?
う〜ん?わからん。
「部長、聞きそびれてしまったんですけど」
「何かしら」
一誠が部長に訊く。
「俺の駒……っていうか、下僕としての役割はなんですか?」
あ、そういえばオレも訊いてない。
「そういえば、オレも。何の役割ですか?」
部長はニッコリと微笑みながらハッキリと言った。
「『兵士』と『戦車』よ。イッセーは『兵士』で、閃霞は『戦車』なの」
この瞬間、一誠は崩れ落ちた。