二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【ポケモン】果てしない旅路 リメイク【参照100感謝】 ( No.32 )
- 日時: 2012/03/08 17:51
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: kGzKtlhP)
ヒュッ。ガン、ゴン。
さて、上の音は何でしょうか?
「ッって〜〜〜」
「〜〜〜〜!」
正解は、私がキレて丁度良く聖書と「ひぐ●しのなく頃に」の本が手元に合った為、二人に投げつけ、丁度良く頭に本の角が当たった音です。
「あんたたち……いい加減にしなさーい!!」
私は地面を思いっきり殴り、怒鳴った。地面がメシャメシャと地鳴りしてひびが割れている。
その威嚇に、少年もオールもポケモンたちも、恐れをなして正座した。
「全く貴方達は!! そんな良く判らない不毛な言いあいで怪我したら、この『ワカバの鬼姫』様が許さないわよ!!」
そう言うと、コクコクと頷く正座軍。あ、縦線と汗も見える。
「大体貴方も! 愛情とか絆とかくだらないって言ってんけど、自己中も大概にしなよね!! 自分しか視ていないくせに、よくもまあ強さを求めるとか言うわ! アンタに今何言っても聞かないと思うから言わないけど、その持論を私らに押し付けんなっつんの!! 押し売りはごめんよ!!」
最早自分がなにを言っているのか判らなくなったが、唯一つむかついたことはこの少年が自分だけが正しいと思っていること。
自分が中心、後は飾り。そう思っていることに私は怒り狂っているのだ。
確かに、そう思う人も少なくないと思う。弱いポケモンはいらない、と。だが、それを押しつけ、グダグダ言う奴を、私の誇り(『ワカバの鬼姫』)が許さない!!
「……判ったよ」
渋々ながら、少年は納得してくれた。
「だが、今度会う時は絶対勝つ。それだけ覚えとけ」
そう言い、立ち去ろうとした少年を、オールが引きとめた。
「おい、チコリータ置いて行きやがれ。それはウツギ博士の生きた研究資料だぞ」
……オール君、生きた化石みたいに言うのは止めようよ……。一応生き物なんだからさ、ポケモンも。
だが、そんな言い分を聞く相手ではない。
「フン、偉そうに。あのハゲじゃこいつが可哀そうだ」
「ハゲ言うなよ!! あれでも二十九なんだぞ!?」
……二人とも、ウツギ博士の扱い悪すぎです。特にオール。それフォローになって無いです。
いい加減呆れてきたので、私は終止符を打つ言葉を探してそれを口にした。
「……取りあえず名前ぐらい名乗ってよ。礼儀でしょうが」
「最初に言ったろ。『個人情報だから教えない』と。貴様らも知らぬ相手には名乗らない方がいい。身を滅ぼすぞ」
そう言って少年は後ろを向いて、去ろうとした。
私は慌てて止める。
「ちょっと待って! 確かに名前は個人情報だけどさ、世の中いい人だけじゃないけどさ。でも、だからって……」
「何だ。オレはもう行くぞ」
「いや……だからって、トレーナーカードを落としちゃ意味ないよ」
その言葉を聞いて、少年は慌てて私に振り向いた。
そう。この少年—————オールに胸倉掴まれた時、トレーナーカードを落としたのである。それで私に名前は愚か、年齢や誕生日までバレてしまった。
バッ、と物凄い速さで私からカードを取った。
「……名前、見たな?」
少年が静かな声で聞く。声には動揺がみられないが、顔が少し紅くなっている。
私は素直に答えた。
「うん。名前アルジャンから生年月日まで見たよ」
そう言うと、少年————アルジャンは、俯いた。怒っているのか恥ずかしいのか、きっとどちらもだろう。肩も微妙に震え、心境を表している。
「………………」
沈黙が続く。
「………………」
まだ沈黙が続く。
「………………」
まだまだ沈黙は続く。
「……くそ! 覚えていろよ!」
そう言ってアルジャンは逃げるように走って行った。
顔を真っ赤にしながら言った台詞は、あまりにも情けなくて。
「……なんか、結構ハートフルな奴だな」
正気に戻ったオールが呟いたのは、言うまでも無い。
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