二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 言葉遊び、 【銀魂】 ( No.5 )
- 日時: 2012/03/02 21:01
- 名前: 如月 ◆eZsQmZilro (ID: w0.JbTZT)
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「日陰に潜む悪の華 それを摘み取り貪るは 日向の園に咲き誇る 善の華に御座います」
りんりん、鈴の音が闇夜に響き渡る。恐ろしい程にっこりと笑う女の手には銀色に光る刀がひとつ、握られている。
それを見て男は、暗闇の中でも分かるくらい顔を青くした。
握られた刀の意味など、頭が悪い奴でも、わかる。
「ご機嫌麗しゅう、貴方のお命頂戴いたします。」
「……ひっ!」
語尾に〝はあと〟がつきそうなくらい愛らしい——此れから殺人を起こす人のものではない——声を出す。
それが逆に男を震え上がらせて、ただ短く声をあげた。
女はそれとは対照にもっと唇をつりあげて、くつくつと笑う。
「この私、殺し屋〝八咫烏(やたがらす)〟、此の度は貴方を殺して欲しいと命を受けましたので死んで頂きますよ」
「……八咫烏…!!伝説の殺し屋の…!?ま、待ってくれ!俺には妻子がいるんだよ!一体誰がそんな事頼んだんだ…!」
男は顔を歪めながら命乞いを始める。しかし女は動じずに男の首へ刀を這わせた。
——「依頼完了です」そう呟いて一気に首を貫く。
声も出ないまま男はぶくぶくと泡を吹きながら、全てが事切れる。
刀を抜くと、噴き出た血を扇子で防ぎながら、女は一礼する。
「お天道様はきっと貴方を天上のお国へ連れて行ってくれます。」
女は扇子を畳み終えると、そのまま此の場を去った。
女の背後では一切れの紙がひらりひらりと舞っている。
——【指名手配】殺し屋〝八咫烏〟日向鈴——
写真には先程の女の笑う姿が映っていた——。
01〝やたがらすはわらう〟
「チクショー、また負けたぜ。アイツらきっと文句たれんだろーな」
ダルそうな目をした銀髪の男がサイフの中身を覗きながら怪しい路地を進む。彼の名前は坂田銀時(さかたぎんとき)で、彼はパチンコから帰る途中であった。
サイフの中身は悲しいほどにカラで、銀時は苦笑いしながら駐車場に止めておいたスクーターにひらりと乗る。
「どーせ『銀さん!またパチンコやったんですか!あれほどやるなといったのに——』とか説教すんだろーな。あー、めんどくせー」
銀時はどこぞの眼鏡の声マネをしながら、スクーターのエンジンをかけた。
そのままヘルメットをかけようとすれば、目の前に怪しげな紫色の建物が物々しげに立っているのを見つける。
——と、そこへ、屋根の上に人影。
何事かと目を細めて見てみれば、追われている様子の女。
後ろからはパトカーの音が聞こえる。
「オイオイ。何したんですかあの娘。まだ子供の癖にもう犯罪ですかコノヤロー」
ぽつりと呟けば、聞こえる覚えのある声。
明らかに税金泥棒の一人——沖田総悟の声である。
銀時はエンジンを止めると、耳を澄まして盗聴を試みた。
「オーイ、そこの女ァ。パンツ見えてますぜィ。猥褻物陳列罪とスピード違反で逮捕するー」
「失礼な!わたしのパンツは猥褻物じゃありません!セクシースケスケパンツちゃんですよ!それに乗り物にも乗っていないのにスピード違反てなんですか!!理不尽ですよそんなの!」
「うるせェや。人間ていうのは理不尽なモンなんでィ」
「ふむふむ…そうなのかタメになります……って煩いわ!!」
女は的確なツッコミをする。
その姿はどこぞのウザ眼鏡に被るが、そんな事お構いなしに銀時は聞き耳をたて続ける。
女は屋根の上で相変わらず走っていて、よく見れば息切れもしていない。
すげーな、と銀時は考えながら2人のいく末を盗み見r……見守る。
「もう行っていいですかね?わたしに後ろくらいことなんてないし」
「本当にそうですかねィ……殺し屋〝八咫烏〟社長サマ。」
「あれ、バレてましたか……。それなら退散しなければ!さよならぁ!」
「そうはさせねェぜ!」
——嘘だろ?と、銀時は目を見開いた。
八咫烏って——最強の殺し屋じゃねーか。あの娘が?けれど沖田が差し出している手配書の写真はあの女である。
女は、屋根を伝い、紫色の館に入っていった。
沖田もすぐさまパトカーで追って、紫の館に入る。
——しかし。
「嘘だろ」
紫の館の中には、誰もいなかった。
見たところ逃げれるような場所もないというのに。
「旦那じゃねェですかィ。見てたんですか?」
「ああ」
「情けねェ話ですが、何時もこうだ。どれだけ探しても逃げ道は見つからねェのに…。奴は何時もいねェ。魔法でもつかったんですかね」
——そんなわけねェと思いますがね
沖田は渇いた笑みを見せた。けれど、俺は非科学的だとわかっているが、あの女が魔女のような気がしてならなかった。
其れが、あの女と俺の出会いバナシ。
——
八咫烏(やたがらす)=三本足の烏のこと。太陽の別名としても使われる。