二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- その11 ( No.39 )
- 日時: 2013/08/26 22:45
- 名前: RE ◆8cVxJAWHAc (ID: A7lopQ1n)
☆
コンパスが指す方角に箒を飛ばしていると、森の中に小さなログハウスを見つけた。
あれが、モリカワ倉庫かな?
あたしは一気に箒を下降させて飛び降りると、その勢いのままログハウスのドアに取り付いて、ドンドン叩いた。
中に誰か居ますように…!
「はいは〜い」
ドアの向こうから、間伸びした返事が聞こえた。
この声は…。
「桜田さん!」
「あら!チョコちゃんじゃないのぉ!」
ドアを開けた桜田さんは、満面の笑みを浮かべてあたしを抱きしめてくれた。
「怪我、とかもなさそうね!無事で何よりだわぁ!」
そういって、あたしをログハウスの中に引っ張っていく。
「ちょ、ちょっと待って!桜田さん!ギュービッドさまを、助けに行かないと!」
「え?ギュービッドを助けに…ってどういうこと?ギュービッド、どうかしたの?」
「ギュービッドさま、死霊と戦って、凄い怪我して…!」
「えぇ!?ギュービッドが怪我!?」
「おい、何外でごちゃごちゃやってんだよ!早く中入れって」
桜田さんの後ろから、呆れ顔をした黒雷さんが出てきた。
そのままあたし達の横を通りすぎて、ログハウスから少し離れた所でキョロキョロし始める。
「え…?黒雷?どうしたの?」
桜田さんが怪訝な顔をする。
「いや、何か、ぞわっとしたっつーか…」
黒雷さんが振り返ってそう言った瞬間、頭上の上の空間がぐにゃりと歪み、
「…どわーーー!?」
「ぎゃあぁ!?」
黒雷さんの上に、黒々とした何かがぼてっと落ちてきた。
あれは…。
「いっつつ…何だぁ!?」
「うおぉ…まさか黒雷の上に落ちるとは思わなかったぜ…」
「ギュービッドさまあああー!!」
あたしは思わず叫んで、駆け出した。
そのまま、座り込んでいるギュービッドに再び抱きつく。
「ギュービッド!お帰りなさぁい!」
桜田さんも後ろから駆け寄ってきた。
「おおチョコ!お前も無事だったか、良かった良かった!おーう、ただいま桜田」
ギュービッドの横で黒雷さんは胡座をかいて、抗議の声をあげる。
「…ったくいきなり人の上に降ってくるなよ!驚くだろ!」
「仕方ないだろ!こちとら疲れてうまく座標決定出来なかったんだよ!」
ギュービッドさま、喧嘩してる場合じゃないよ、早く、怪我の手当てしないと!!
「あ、そうだった」
「はあ?怪我?…おい何だこれ!なんかやばいぞ!!」
「ちょっと!何してきたのぉ!?」
黒雷さんと桜田さんも気づいて、驚きの声をあげる。
「分かってるよあんまり大声出すなって!!」
「ほら!こっち来い!!」
「わ、ちょ、いでで」
黒雷さんが立ち上がって、ギュービッドに肩を借し、ログハウスに半ば引きずるように連れてゆく。
桜田さんは慌てて、反対側でギュービッドを支えた。
あたしは急いでログハウスのドアを開ける。
「おい!森川ぁ!!」
「…黒雷?何?」
黒雷さんがログハウスの中に入りながら中に呼びかけると、キッチンの奥を整理していたらしい森川さんが顔を出した。
あら、お帰りギュービッド!と言い終わり、脇腹を押さえるギュービッドを見て、顔色を変える。
「ちょっと!?何それ!?どうしたの!?」
「いやまあ色々な…」
「いいから!治癒魔法の準備!!魔縫合糸の余り、まだあったよな!?」
「多分あるわ!見てくる!!」
黒雷さんが畳み掛けるように言うと、森川さんはそう言って、またキッチンの奥に引っ込んだ。
「黒雷、チョコちゃん、ギュービッドをお願い!」
桜田さんもギュービッドから離れて、キッチンの奥に飛んでいった。
あたしは慌てて、桜田さんが抜けた方を支えに行く。
黒雷さんはそのままギュービッドを隣の部屋まで連れて行き、ベッドの上にばふっと投げ出した。
「ぶっ……黒雷ぃ…怪我人の扱いかよそれ…」
今度はギュービッドが黒雷さんに抗議の声をあげる。
「うっせ、無茶して心配させた罰だ!…まあそんな文句が言えんなら、大丈夫だろ」
「そうだよそんな大騒ぎすんなって…」
「うるせぇ黙って寝てろ」
「お、おお…」
黒雷さんの目が怖い…本気で怒ってるのが分かる。
やっぱりすごく心配してたって事だ。
「あった!救急箱!あったわよ!」
「先輩!!大丈夫ですか!?」
森川さんと桜田さん、それから桃花ちゃんが、部屋に駆け込んできた。
「あいよ、あとは任せたぜ。チョコ、あたいらは、隣で待機だ。あと桃花もだ」
「うう、はい…私には医療魔法の心得は無かったのでした…」
桃花ちゃんがうな垂れる。
あたしも医療魔法は使えないけど、でも、あたしにも、何か手伝わせて…!
「大丈夫よ、任せて。それにチョコちゃんも、疲れてるでしょ」
森川さんがあたしに微笑んで言う。
ギュービッドも平気だ、という風に片手をひらひらと振った。
「そういうこった。ほらほら」
「行きましょう、おねえちゃん」
あたしは黒雷さんと桃花ちゃんに引っ張られて、部屋から出た。
ドアを閉めると同時に、ドアの隙間から黄色い光が溢れて来るのが見えた。
「ルキウゲ・ルキウゲ…」
ドアの向こうから、聞いたことのない呪文が聞こえてくる。
あたしはドアの前に立ったまま、ぎっと下唇を噛んだ。
神様仏様、どうかギュービッドを助けてください…!
「…あちッ!」
「ん?どうした?」
いきなり、スカートのポケットのあたりが熱くなって、あたしは慌ててポケットをひっくり返した。
細かい灰色のものがいくつかひらひらと舞って、床に落ちる。
これは、キョーカちゃんから貰ったお花?すっかり忘れていた。
…今、もしかして燃えた?なんで…。
「何でおねえちゃん、ポケットに灰なんか」
桃花ちゃんが床に落ちた灰の塊を拾う。
それはすぐに手の上で崩れて、粉になった。
あたしは黙って首を横に振る。
「わからない、わからないけど…」
何だか、不気味な、嫌な予感がするよ。