二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ONEPIECE -海姫-  建て直し!! ( No.39 )
日時: 2012/03/11 15:56
名前: 朔良 ◆D0A7OQqR9g (ID: w0.JbTZT)

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「リ、ル……?」


視界が、真っ暗になる。返り血が、私を染める。
ぐて、とリルが私に倒れて来た。


「……セ、ナ姉……無事、なの?」
「私は無事よ!そんなことより手当を…っ」
「………、ごめんね…。ぼく、…戦争、起こしちゃった…」
「そんなのいいわ!いいから、はやく、…手当を…っ」


リルは微笑みながら私に抱きつく。
血がついちゃうけど……と呟いて、リルは私の背中にぎゅうっと手を巻き付けた。


「ねえ。ぼく、セナ姉がすきだよ…」
「……っ私も好きよ………だから死なないで……」
「ぼくに、死んで欲しくないって言ったよね…?ぼく、嬉しかった」


リルの名前を、呼ぶ。
涙が流れて来る。


「泣かないで………。ぼく、死んじゃうけど……泣かないで」
「死ぬなんて言わないでよ…!!死なないでよ!お願いだから…ッ」
「…ぼくを好きでいてくれて、ありがとうね………」






「ぼくは、幸せだったんだ。本当に。」


リルが、ゆっくりと目を瞑るのが肩越しに見えた。
死なないで、と願った。けれど願いは届かずに。


「…リル?……リル、いやよ。いや、死なないでよ…」


涙が次々と零れ堕ちる。


ただ、重力に逆らわず。




「いや、いや…!いやだいやだいやだ…!
 いやああああああああああああああああああああああああああ!」





私の、せいだ。








私が、リルを、

この灰色の猫を。






————————殺した。









私が、



私が殺した。

私があの時後ろの男に気付いていたら。私がリルを停めていれば。


私が代わりに死んでいれば。



リルは、死ななかったのに。

ずっと規則正しい心臓の音をならして、
今を、未来を。生きていたはずなのに。



ごめんね。痛かったね、恐かったね。もっと生きたかったよね。まだ15歳だよね。

もっと幸せになりたかったよね。
奴隷なんかやめて、幸せに暮らす未来を描きたかったよね



「リル……ッ」



私の声は、リルと同じ色をした灰色の屋根に吸い込まれ、やがて消えて行く。


ごめんなさい、
ごめんなさい、と何度も謝るけど


一生リルは生き返る事なんて無い






私 が リ ル を 殺 し た




だって、そうでしょう?









その時突然、視界が暗くなる。くらくらと、体が揺れる。
必死に瞼を開けるけど、まだ辺りは暗い。



ずん、と暗闇が私を包んだ。















***








「———っ、」
「————〜〜」




「お姉ちゃんッ」
「セナ姉っ」


「……え」


果てしない暗闇が、すうっと避けて、シャボン玉が弾けるように眩い光が私を支配する。

—今さっきのは、夢?
—そうよ、きっと夢だわ。

目の前には、私とよく似た顔をした少年と、ふわふわとした紙を一つ括りにした猫のような少女が居た。


——セラ、と・・ミル?


まだ覚醒しきっていない頭で、ぼや〜っと考える。2人は私が起きたことに、喜んでいるようだ。


「大丈夫?お姉ちゃん…っ」
「よかったぁ〜……心配したよ?」


朧げに揺れる視界に移る2人は、心底安心した様な顔を見せる。
まるで、さっきまで私が死んでしまいそうになっていた、と言うように。


—死んでしまいそう?


—・・死ぬ?


「そうだ!リルは!?リルはどうしたの?!」


すぐに飛び起きて、あの灰色の猫の事を尋ねる。しかし2人はその言葉を聞いた途端、顔を伏せた。


「……ねえ?嘘でしょ?あれは、夢だったんでしょ!?そうにきまって……」
「お姉ちゃん。」


「…………!!」
「夢じゃ、無いよ。リルは———・・」


嘘、嫌だ。聞きたくない、と耳を塞ぐ。
セラは私をじっと見つめると、そっと耳を塞いでいる手をのけた。


「聞いて。リルは、……死んだよ。」
「嘘、でしょう。だってあれは夢で……!ねえっ、リルは何処なの?リルを見せて!」


ミルは沈んだ顔をして、「……セナ姉、こっちに来て」と私の手を引く。
その行動に、セラは反抗している。


「ミル!まだ駄目だよ!今見せたら……!」


その言葉もまるで聞こえていないようにミルはセナを誘導する。
ぎいいい・・と開けられたドアの間を覗くと、白い部屋があった。

白い布を被った人が眠っている。


ミルは、手をそっと合わせて一礼すると、白い布をそっととった。


「…………っ」


リ、ル。

青白い顔をして、眠っている。堅く閉じられた目は、二度とあきそうにない。

顔にそっと触れると、驚くほど冷たくて、手をすぐに引っ込めた。


起きて、と身体を揺らしても、リルは目を開けない。


「起きてよ」


起きて。そう願うけど、リルはついにおきる事は無かった。


知っていた。夢じゃないと、現実だと。


だけど、信じたく無くて。


「……ごめんなさい、…ごめんなさいっ」


でも、立ち止まってはいけない。
此の子が求めた自由を、私達がつかみ取りたい。


「私、行かなきゃならないの。」


リルの瞼にそっと唇を重ねる。


「ミル、ごめんなさい。私、守れなかった」


唇をそっと話して、ミルに向かい合って謝る。
ミルは、淡く微笑んで、


「いいの。セナ姉のせいじゃない…。
 あたし、セナ姉を守った姉を誇りに思うわ」


こう言った。
ミルの声は少しかすれていたけれど、何処か堅い決意をふくんでいた。




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