二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ONEPIECE -海姫- 建て直し!! ( No.42 )
- 日時: 2012/03/11 16:04
- 名前: 朔良 ◆D0A7OQqR9g (ID: w0.JbTZT)
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少年は、フードを脱いだ。後ろで人———セナ———が倒れた音がしたのもお構いなしに、ふふっと笑う。
無造作な濃藍の髪が揺れ、血の色をした目が面白そうに細められた。
「知ってる?白雪姫は、王子様の口付けで目を覚ますんだ……」
望みの終焉は、すぐ其処に。少年は、口角をあげて頬を持ち上げる。ああ、面白い。
「ねえ……、海姫様?」
少年は振り返る。
視線の先は、セナの手の先に転がった、蒼い実だった。
少年は、水に囲まれて姿を消した。
はやく、はやく
あの姫を此の手のうちに。
ぼくのものに、
何としてでも。
***
夢を、みた。
蒼い光が私を指すようにきらきらと光る。その中に私は居た。
「此処、何処……?」
そう呟くと、ふわりと私を水が包んだ。
少し香る潮の匂いに、海水だと分った。
何故か、とても懐かしい。この匂い……
ああ、そうだ。蒼ノ国の、海の匂い……
涙が零れてきた。
この匂いに、もっと包まれていたい。海の、懐かしいこの匂いに。
〝そうは、いかぬよ。海帝の、次期 妃よ……貴様は選ばれたのだ。海帝に〟
その声は、セナに聞こえてはいなかった。
***
〝きゃははは♪起きた?〟
少女の、笑い声。
朦朧とする意識の中、視界に黒い髪の少女を捕らえる。
黒いゴシックロリータにツインテール。
ブラウンのアイシャドーに紅い目。唇は、綺麗なローズピンク。
——お人形さんみたいだ。そう、思う。
〝次は貴方がフィーの主ね♪〟
「……!貴方は、誰……?」
少女はローズピンクの唇の端をにいっとあげた。
目も細めて、心底、楽しそう。
ぞくりと背筋に冷たいものが走ったけれど、そんなこと、どうでもいい。
〝きゃははは♪睨まないでよ♪〟
「答えなさい……!」
〝こわーい♪フィーは貴方の食べた悪魔の実に宿る悪魔よーん♪〟
「あく、まのみ……?」
それって確か、食べればたちまち能力が得られるが
そのかわりに海に嫌われるって言う……!
そんなもの、私は食べていない。
〝滑稽だねぇ♪食べたじゃんか、悪魔の実♪〟
少女は私のおなかを指差す。
——……「もっと強くはなりたくない?」
も、しかして。
あの蒼い海を連想させる実は。
膝を、つく。がくがくと、腕が震えた。
もう、遅い。わたしは実を食べてしまったのだ。
〝やぁっと思い出してくれたァ?〟
「じゃ、じゃあ私もう、泳げないの?」
〝んーん♪貴方が食べたのは海を操るウミウミの実。何千年前からある此の世で一番尊く、恐い実♪ヤミヤミの実をも凌ぐ最強の、実♪〟
「ウミウミ、……海を操れるから関係ないのか……」
さっすが!物分りがはやーい、と、少女は笑う。
少女は深い、漆黒を揺らして唇に弧を描く。
最強の実、正直恐い。そう思っても、もう遅いのだけれど。
〝だけど、ひとつだけ欠点があるの♪それは歳がとれ……〟
ドガアアアアアアンン!
少女の声を遮って、爆音。
少女は笑みを深めた。「もう、さよならの時間だ♪」
そういいながら軽やかにステップを踏む。
すると、狼が私の前に現れる。
〝それはハクって名前の神狼♪此れから貴方の使い魔になるわ♪〟
「——…貴殿が次の主であるか。名をなんと言う。」
「……!せ、セナよ!」
「そうか、主。我は貴殿の使い魔のハクである。」
「……ハク、ね……。わかったわ。」
〝きゃははは♪じゃあねぇ♪あっ、ちなみにフィーの本名は…!〟
——ラビリンス・シーナ・ラフィネ♪貴方の中に潜む悪魔♪
その刹那、辺りが光に包まれた。
意識が遠のく中、思う。そういえば、私は。
〝だけど、ひとつだけ欠点があるの♪それは歳がとれ……〟
あの言葉の続きを。
聞いていない。
(今気づいていれば)