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　　8話　　あの子だ…　　　　　　　　　秋side



　なんとなく、歩いていたら耳を塞いで立っている子がいたから声をかけてみた。

　「貴方、大丈夫?」

　声をかけるとその子は、ハッとしてこっちを振り向いた。

　顔を見ると、さっき運動場の場所を教えてくれた子だった。

　「貴女、さっきの…。」

　すると、その子は話題を変え

　「運動場に着きましたか?」

　「えぇ。」と、私は答える。

　その時、ふと聞きたくなった。

　「あの、厚かましいんだけど、ＭＦを知らない?」

　その子は、「へっ?」と声を出した。

　私は、続けた。

　「円堂君たちが必死で探してるから。少しでも、何か分かる事ない？」

　その子は、頬をつたう汗を拭い、

　「いえ。何も。」

　「ごめんなさいね。こんな事聞いちゃって。」

　「いえ。」

　私はそこで、初めてその子の瞳が怯えているのが分かった。

　「じゃあ。」

　私が何か言う前に、その子は逃げるように走り去った。



　私は、確信した。

　あの子が、伝説のＭＦなんだと。

　でも、どうしてあの子は隠しているんだろう?



　その時の私は、知る由もなかった。

　あの子の悲しい過去を…。