二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 無 題 【銀魂】 ( No.12 )
- 日時: 2012/03/29 09:04
- 名前: いろは ◆LUdEVzdrco (ID: w0.JbTZT)
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「まあまあ。待ちなさい」
「……え?」
優しい、父ちゃんのような声が聞こえた。
何故かとても懐かしくて、ほっとする。思わず襖を開けようとしていた手を止めて、振り向けば——
「ゴリラァアアァアァ!?」
「えええええ!それ酷くない!?泣いちゃうよ!?俺泣いちゃうよ!?」
そこにはゴリラがめそめそしていた。勝手に泣けゴリラ。野生に帰ってバナナでも食べてろ。
そんな事を思いながらゴリラを見つめた。あ、近藤さんじゃんか。気づかなかった。本当のゴリラかと思ったぜチクショウ!
「何ィイイィ!?何チクショウって!ゴリラであって欲しかったの!?そうなの!?ねェ!!」
「わ!心読まないで下さい!」
「口に出てやしたぜィ。つーかどーでもいいですからさっさと用件言ってくだせェゴリラ」
「総悟までェェエェ!?」
何気に沖田くんもノってきた。ぅわーい仲間だ仲間だ〜!とか思ってたら土方さんに叩かれた。近藤さんも土方さんも心読まないで下さい。
03 救世主は意外と近くにいるもの
するとゴリr……げふんごほん、近藤さんが咳払いをした。それにつられて思わず姿勢を正す。沖田くんはだるそうに胡坐をかいて、土方さんは早くしてくれと言わんばかりに頬杖を付いている。
近藤さんが沖田くんと土方さんを見回して最後にわたしを見た。そのまま口を開く。
「どうだ、翼ちゃんを女中にしてみては」
「「——は?」」
その言葉に一番に声をあげたのはわたしと土方さんだ。女中?この人は何を言ってるんだ。馬鹿なのかそうなのか。
真選組にしてみればわたしは得体の知れない不審人物だ。
なのに、何で女中?その前にわたし家事とか嫌いなんですけど。
「何言ってるんですか!」
わたしは思わず声を張り上げた。そこに土方さんの声。
「コイツの言うとおりだ。近藤さんアンタ何言ってんだ!」
「わたしどうせなら隊士がいいです!」
「イヤそこォオオオォオ!?」
土方さんがツッコミの手をいれる。ぱっつぁんも驚きのツッコミだよ。エクセレントだよ。
つーか当たり前じゃないか。此処に来たからにはわたしだって侍として刀をふりたい。銀魂のキャラたちが言う〝魂〟ってモンをわたしも感じてみたい。
と、そこでおずおずと近藤さんが話しだした。
「ま、まあそれは後で決めよう。——トシ。この子には帰る場所すら何処にもないんだ。それにこの子は攘夷志士でもないし嘘もついていない」
「——わかんねェな、近藤さん。……どうしてそんなことが言えるんでさァ」
「この子の目が語ってる。嘘をつくような子はこんな澄んだ瞳をしていない。力のこもった瞳をしていない」
初めて口を出した沖田くんに近藤さんはにかっと笑って自分の目を指差した。
どうして。どうして。わたしを信じてくれるのだろうか。
なんだか複雑な気持ちが入り混じって、視界が滲んだ。くそう、母ちゃんにいわれたのにな。
どんなことがあっても泣かないって、約束したのにな。
「う、」
「?え、翼ちゃんどうしたの?」
「うえーん!どーして信じてくれるんだよーゴリラのくせにー!」
「いやゴリラ関係なくね!?」
我ながら子供っぽい泣き方をした。うえーんって何だうえーんって!自分で思いながらも自らの思いを全部叫ぶ。
「異世界から来たとか馬鹿みたいなコト言ってんのに何で信じてくれるの!?わたし攘夷志士かもしんないんだよ!?嘘つきかもしんないんだよ!?目が澄んでるからってバッカじゃないの!?」
「…………」
「……わたし、馬鹿だよ阿呆だよ。母ちゃんと父ちゃんと兄ちゃん残してアッチの世界で勝手に死んじゃった。親不孝者だよ」
母ちゃんと父ちゃん、兄ちゃんに言ったのに。「必ず帰ってくるから」って。「待っててね」って。
涙が止まらない。鼻水と涙でぐしゃぐしゃで不細工な顔してる、きっと。なのに誰も笑わない。真剣な顔でわたしの話に耳を傾けている。
どうしてなんだろう。どうして。
「どうしてそんなに優しいんだ……!!」
一際大きく叫べば、はっと土方さんと沖田くんの息を呑む音がした。
嗚咽が止まらない。久しぶりにマジ泣きしたわ、くそう。本日2回目だ。泣いたのは。母ちゃんと父ちゃんの前でも数える程度しか泣いてないのに。
鼻水をぐずぐずしていると、近藤さんが優しい声色で語りかけてきた。暖かい大きな手がわたしの頭を撫でている。
「——翼ちゃん。俺が君の家族になろう。此の場所が君の帰る場所にしよう。——おいで、真選組に」
「………う゛ん゛……!!」
いつのまにか土方さんと沖田さんも微笑んでいた。
ああもう。此処の人たちは優しすぎる。止まりかけた涙がまた溢れてきたじゃないか。
そのまま暫く泣きじゃくっていた。
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