二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【短編集】True liar【inzm】オリキャラ募集中! ( No.36 )
日時: 2012/04/10 22:18
名前: 海穹 (ID: fQORg6cj)
参照: オリキャラ募集しつつ、本編開始します!!


「Family」


episode 1    「女帝の微笑み」




ウィレイバス国


海と隣する、かなりの大きさのその国の情勢はお世辞にもいいとは言えないものだ。

一部を除いて。



この国の治安を治めているのは、各地に点々といるマフィアと言われる者たちだ。

かなり昔、この国の政治が悪くなりだした頃に唐突に生まれ、着実に力をつけたその人々は、争いながらこの国を支配しだした。平民はそんなマフィア達に振り回され、政府は手を出せない、そんな存在に革命とも言うべき変化が起きたのはここ数年だ。

新しい思想を持ったマフィアの誕生により、この国の治安は悪くはあるが救いようがないと言うほどではない状態が保たれている。
何とか、ではあるが。


そんな、新しい思想を持ったマフィアの筆頭が、『フィロメラファミリー』である。
女性を頭領とする、マフィアではあるが、実力は侮るなかれ。何せ7大ファミリーの一つを担うほどの大マフィアなのだから。


そして、その『フィロメラファミリー』の頭領、『女帝』ヒョウカ・フィロメラは代わりものとしても有名だ。





          * * *




「ねえ、ユウト」

クリーム色の髪を下ろし、ぼんやりと椅子に座りながら窓の外を見る女、ヒョウカは、男の顔も見ずに名を呼んだ。
呼ばれた男はヒョウカを見て、どうしました、と優しく問いかけてくる。

「今日、何かあったっけ?」
「いえ。特にありませんが、どうなさいました?」

歩み寄ってきた男、ユウトにそう聞かれ、ヒョウカはやっとユウトの方を見た。その目は何処か疲れているように見えて、ユウトは顔を顰める。
そしてすぐに心配したような口調で問いかけた。

「お疲れですか?」
「別に。なんか、嫌な予感」

ヒョウカはそう言って高そうな黒光りする革の椅子から重そうに腰を上げる。先ほどまでユウトを映していた黒い、何処か深い瞳は今は屋敷の外の街を見下ろしていた。



ヒョウカ・フィロメラ
この名を聞けば、誰もが道を譲るほど名の知れたマフィアの頭領である彼女は妙な人物である。マフィアのわりに妙に明るく、領地の人々とも親しい。
そのくせ、戦いとなり、大切な人々が傷つこうものならばそのマフィアに牙をむく、そんな人だからこそだろう、気がつけばヒョウカの下には彼女を慕うたくさんの人々がついていた。


ユウトもその一人だった。

だからこそ、彼女の望んでいることは叶えたいし、不安は出来ることなら早く取り除きたい。


「……街には警備がいます。大丈夫です」

そう言って微笑んで見せれば驚いたようにこちらを向いて目を丸くするヒョウカ。

「そうだな」

ヒョウカもそう言って微笑みを見せた。『女帝』という異名をもつ人とは思えないほどの穏やかな笑みを。