二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【短編集】True liar【inzm】オリキャラ募集中! ( No.43 )
日時: 2012/04/15 11:59
名前: 海穹 (ID: fQORg6cj)
参照: 高校始まって忙しい……


「Family」

episode 3 「エレクトラファミリー」




肩を上下させながら荒く息をする、扉を開いたその人は紛れもなく『フィロメラファミリー』の一員であるユンカだった。冷静なユンカがここまで焦っていることに驚愕してヒョウカが電話を切り、ユンカを見据える。


「どうしたの」

きわめて冷静なその声だが、目は返事を催促しているように見えた。
当たり前だ、あのユンカがここまで取り乱している時点で緊急事態なことは目に見えている。それへの対処を速くしなければ何があるか分からないのだから。

「れ、レルベットが……、レルベットファミリーが壊滅させられました……」

あの、噂に上がっていた『レルベットファミリー』が?なぜ?誰に?

疑問は尽きないが、どうやら話はこれだけではないらしい。

「その、レルベットを……壊滅させたのが、エレクトラだと、言う話が」


ガタンとけたたましい音を立ててヒョウカが席を立った。そのまま、電話を取り、レイナにあまり見覚えのない番号を押す。


数拍ほど経ってから、ヒョウカが捲し立てる様に言葉を紡いだ。

「フィロメラだ!マモルを出せ!今すぐにだ!!」

今までの経緯なく聞けばただの脅迫だが、それを気にしていられるような余裕は今部屋の中にいる三人にはない。
どうやら受け付け用の電話係は案の定脅迫だと思ったらしく、ヒョウカが言い争っている。声はそこまで大きくないが、かなりイラついているのは口調で分かってしまう。それほど、ヒョウカはマモルと話がしたいらしかった。


「いいから!いいからマモルを出せって、」

そう言ったところでヒョウカが急に静かになった。

「マモル!あんた一体なんで!!」

血を吐くような声が辺りに響く、その場に入ってきたのはユウトだった。焦った様子で部屋に入ってきたユウトにレイナとユンカの視線が集まる。ヒョウカはユウトが部屋に入ってきたことにすら気づいていない様子で電話に没頭している。

「何があって急につぶしたりなんか!そんなの私たちのやり方じゃ、な」

と、ヒョウカがそう言ったときに、ユウトが電話を引っ手繰る様にして奪った。
ヒョウカが唖然にとられているい間にユウトがマモルと話を始める。

「マモル、俺だ。こっちに情報が入っていなくてな。何があったのか、そして何のためにそんなことをしたのか、話してもらいたい」

ユウトはそこまで口を挟ませまいとまくし立てるように言った。声は冷静だが、ヒョウカと同じように真相が知りたいようではある。目が、ひどく鋭いからだ。

「ちょっと!ユウト!!」

ヒョウカが口をはさむがユウトはお構いなしに電話を続けている。

「……あぁ、分かった」

そう言うと、ユウトはゆっくりと電話を切った。


「マモルが、話しにくるそうだ。応接室を開けるように言ってくれ」

ユウトの指示を聞いてレイナが部屋から駆け出して行った。

「ユンカは、何か料理でも頼む。マモル達に出す菓子と、頭領に何かリラックスできるものを」

ユンカは頷き、すぐに、と言い残して部屋から出て言った。
その足音が小さくなり、聞こえなくなると部屋は静寂に包まれた。

「……エレクトラは、わけもなく何かを壊したりするような奴らじゃありません。大丈夫ですよ」

ユウトはそう言ってヒョウカが立ち上がった時に倒れたらしい革の椅子を直し、ヒョウカに座る様に促す。

「分かってるわよ。そんなこと、分かってるって……」

ヒョウカらしくない声にユウトが驚く。か細い、マフィアのボスなどと考えられない、そこらにいる、か弱い女の声だった。
あの、凛々しいボスは何処に言ってしまたのだろうとユウトは心中でひとりごちた。

ただ、彼女がここまで取り乱すのも分からないでもない気もする。
『フィロメラファミリー』と共に、マフィアに革命とも言うべき旋風を巻き起こしている、その中心にいるマフィアが、『エレクトラファミリー』だ。人を護ること、それを大切にした意志を持つマフィア。ヒョウカ達とともに人々を護るそんなエレクトラが、なぜ、こんなことをしたのか。

エレクトラが、レルベットに何かされたという情報もなしに、一つのマフィアを潰したのか、が。



「兎に角、落ち着きましょう。すぐに、マモル達が来ます」

ユウトはそう言った。その声は、何処か、自分に言い聞かせるような口調でもあった。