二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【短編集】True liar【inzm】オリキャラ募集中! ( No.56 )
- 日時: 2012/04/24 21:54
- 名前: 海穹 (ID: fQORg6cj)
- 参照: specパロ書く!!同時進行していく!!
「Family」
episode 4 「手紙と真相」
バタバタと慌ただしい足音が響くのはフィロメラファミリーの本拠地、「アルテ」の街で一番美しい建物の中。そこはもちろん、フィロメラファミリーの大事務所、通称「モルゲンレーテ」と呼ばれる場所である。
街一番の設計士や大工が腕によりをかけて造ったそれはマフィアの事務所というよりは美術館や博物館に近い美しさである。
もちろん、中に高い絵画なんて無く、あるのは銃だの剣だのであるのだが。
そんな事務所の二、三番目に細かい造りになっている応接室は話し合いや来客への対応に主に使われている。
そして今は、フィロメラとエレクトラとの話し合いの場だ。
* * *
ヒョウカは入り口を睨むように見つめていた。もし、ヒョウカが目線で人を殺せるならざっと4、5人は死んでいそうなくらいに。
そんなヒョウカの様子に後ろにいたユウト、レイナ、ハルナ、ユンカはピリピリとしたその空気のせいで背筋がいつも以上に伸びている。誰もが早く入ってこい、という目線を向けてドアを見ていれば、コンコンと外からノックの音がした。
「マモル・エレクトラ様とお付き添いの5名がご到着なさいました」
淡々とした声がしてから、ヒョウカは間髪入れずに入れ、とぶっきらぼうな声を上げた。
その声が聞こえた数拍後にはドアの向こうにマモルの顔が覗いた。
マフィアらしからぬオレンジのバンダナは相変わらずで、ヒョウカは片頬だけを上げて笑う。その心中にはただならぬ苛立ちがあることは目に見えているが。
「久しぶり、フィロメラ」
マモルがニカッと笑いながらそう挨拶をした。何もかもがマフィアらしくない彼だが、一応は7大ファミリーの一角を担う大マフィアの頭領だ。なめてかかれないことをヒョウカは良く知っている。そのためか、先ほどからの緊張感は全く消える気配がない。
「あぁ、久しぶりだな」
そう言っているうちにマモルはヒョウカの目の前の革のソファーに腰掛けた。他の5人はその後ろで背筋を伸ばして立っている。マモル以外はり見るからに立派なマフィアだな、とヒョウカは心の中でひとりごちる。
「早速だが、話に入らせてもらうぞ」
ユウトの有無を言わせぬ声に、マモルはあぁ、と簡単に返した。どうやら、あちらは自分たちのしたことに正当な理由を持っているらしい。
「今日、午前10時42分、こちらの事務所にある情報が入りました。エレクトラファミリーが、ソレル地区14番街にあるレルベットファミリーの事務所に襲撃、壊滅させた、と」
そう書類を見ながら凛々しい声で言ったのはユウトの実の妹、ハルナである。フィロメラがこの国全土に誇る情報部のリーダーであり、歩く図書館の異名を持つ彼女ですら、何一つ情報を掴めなかったこの事件。多分、ヒョウカの次にこの真相を知りたいのは彼女だろう。
「一体どのような経緯があって、このような暴挙に?」
ハルナは極めて冷静を装いつつそう聞いた。
すると
「暴挙なんて言い方、やめてもらえない?」
と、おしとやかな声が響いた。
お嬢様のような声の主は、マモルの後ろに立っているナツミだ。
「それなりの理由がなきゃ、あんなことしないわ」
なるほど、やはりそうかとヒョウカは少し殺気に似た気配を引っ込めた。
だが、そうなれば次に気になるのはその理由だ。
ヒョウカは次の言葉を催促する気配と視線をナツミに送る。そうすると、ヒョウカが望んだ言葉をくれたのはシュウヤであった。
「手紙が来たんだ。差出人も分からない、謎の手紙が」
「謎の……手紙?」
レイナが鸚鵡返しのようにシュウヤが紡いだ言葉をもう一度紡ぐ。
「……あぁ。これがそれだ」
シュウヤはトラマルが鞄から出した1通の手紙をテーブルに置いた。
そして、手紙に目を通したヒョウカたちは、すべてを悟った。
エレクトラがレルベットを潰した理由、そして……
これから始まるであろう大きな戦いを——————