二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【短編集】True liar【inzm】オリキャラ募集中! ( No.69 )
- 日時: 2012/04/30 09:43
- 名前: 海穹 (ID: fQORg6cj)
- 参照: なんかボカロも書きたくなってきてしまった…
「Family」
episode 6 「ウ二タス」
ウ二タスファミリー
この国にマフィアが生まれてからすぐに生れ、そしてこの国のすべてを統一せんばかりに力をつけ、瞬く間に南、東、北の地区を支配した、歴史に残る大マフィアだ。武力行使の荒々しい争いによって多くのマフィアを壊滅させるやり方は、さながらマフィアというよりは軍隊、特攻部隊と言った方が正しいほどだったと伝えられている。
彼らが支配した領地は今の7大ファミリーが支配している領地を合わせたのとほぼ同じかそれ以上と言った大きさだ。
しかし、そんな大マフィアの終焉はひどく呆気ないものだった。
ウ二タスファミリーの発端から十数年後。
ウ二タスファミリーの頭領、ドラティ・ウ二タスが病死したのである。
ドラティには親も、妻も、子も、親族が全くいなかったのだ。本当に、誰ひとり。
そのため、彼が病死した後、ファミリーをまとめ上げる新しい頭領。ドラティの後継者がいなかったのだ。もちろん、それになりたがる人はファミリーの中に山ほどいた。そんな奴らが内紛を起こし、結局、ウニタスファミリーは壊滅した。
しかし、そうなればあの手紙はかなりやばい内容、ということになる。
ウニタスファミリーの意志。それはこの国、ウィレイバス国の統一だ。
それが、目的などだとしたら。そうなれば……
「まずく、ないですか?」
シュウは震えた声でそう呟いた。ひどく弱々しいその声。彼はどうやら事の重大さを分かっているらしい。まあ、当然だろう。はっきり言ってこの世界でウニタスファミリーを知らない奴は偽物だ。
そのくらい、ウニタスファミリーはこの国に名をとどろかせた大ファミリーなのだ。
「あぁ。送り主も分からないしそこが尚更、な」
ユウトが淡々と言葉を紡ぐとリアがむっとした顔をユウトに向けた。ユウトはなんだ、と言わんばかりの顔をすると
「何でそんなに冷静なの?アルケステ兄妹」
と、眉間にしわを寄せつつリアが言った。
冷静なのにはわけがあるのだが、とユウトが思っていると、ヒョウカがそれ説明をしてくれた。
「ユウトとハルナにはエレクトラとの話し合いに同席してもらった」
あぁ、とシュウが納得した顔を見せ、リアもそう言うことかと眉間のしわを浅くさせた。
リアがいちいちこうやってユウトにいい目を見せないのにはわけがあった。
リアは、ヒョウカをひどく敬愛してるのだ。
リアの故郷、南側陣営ナイレド地区第32番街「マジュル」はリブッサファミリーの領地のすぐそこで、何かあるたびにリアの故郷はリブッサファミリーからの攻撃を受けていた。
そして……
ついにリブッサの領地となってしまったのだ。武力行使で、無理やりに。
その時にマジュルに住んでいた人々はほとんど殺された。リアの両親も。が、その時に出来たばかりだったヒョウカ率いるフィロメラファミリーによって戦闘員として生かされ、奴隷扱いを受けていたリアたち幼子はマジュルに作られた簡易事務所から助け出された。
助けてくれただけで十分だったと言うのに、ヒョウカはこう言ったのだ。
ごめんね、他の、皆の家族を助けられなくて————
その時だ。絶対にこの人のためにこれから生きていこう、とリアたちマジュルの子供たちが誓ったのは。
そして今、リアはもともと良かった頭脳を生かして幼いにも拘らず管理部隊の隊長をやっている。出来る限り、ヒョウカの役に立てるように。
だから、自分よりヒョウカに頼りにされているユウトやハルナを好きになれないのは。
「兎に角、これは緊急事態だ。即刻、対処をしてくれ、頼む」
ヒョウカのその言葉に、4人は、はい、と礼儀正しく礼をしながら返事をし、部屋から出ていった。レイナも、ドアの前でヒョウカに向かって一礼した後、部屋から出ていった。
はあ、と深い溜息が部屋に木霊する。ヒョウカの零した大きな溜息だ。
そして革の椅子に深く腰掛け、手紙のコピーに視線を落とした。
「あんな事件が起こらなきゃいいんだけど」
ヒョウカはそう言って立ち上がり、本棚から一冊の分厚い本を手に取った。そしてその本のあるページを眺める。
ある新聞を切り取って貼られていたそのページ。
ヒョウカはそれに目を落として、しばらく動かなかった。