二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【短編集】True liar【inzm】オリキャラ募集中! ( No.70 )
- 日時: 2012/04/30 11:38
- 名前: 海穹 (ID: fQORg6cj)
- 参照: なんかボカロも書きたくなってきてしまった…
「Family」
episode 7 「突然の交戦」
「ボス。シクザール全体に今回の件の情報を伝えました」
「……そうか、ありがとう」
ヒョウカの部屋にシクザールの隊長4人を呼んでから数時間。ユウトがそう言いながら部屋に入ってきた。その表情には何処か疲れの色が伺える。まあ、それは当然だろう。何せ、ユウトが隊長を務めている戦闘部隊はシクザール4隊の中で一番多くの隊員数を誇る。マフィアなのだからそうなることは自然なのだが。その全員に、隅々までこの件の事を伝えるのはかなり骨が折れる作業だっただろう。
「疲れたか?」
ヒョウカがそう問えば、ユウトが苦笑しつつ少し、と声が返ってきた。
「今日はもう休め。あとはこちらで何とかできるし、シュウ達も今日はもう休んでいるぞ」
「……いえ、誰かが見ていないと、あなたは無茶をしますから」
ユウトはそう言って目を伏せて笑った。何か感傷深げな表情にヒョウカが眉を寄せる。
「何でそんなに感傷に浸ってるんだ」
ぶっきらぼうに聞けば、当然と言った顔で、声でユウトが答えを返してきた。
「何か、こうやっていると全く変わっていない気がして」
「何時と比べてる」
「あなたがこのファミリーを創った当初、ですかね」
そう言われて、ヒョウカはなんとなくその頃のことを思い出す。
ヒョウカがフィロメラファミリーを創ったのは4年前のことだ。そして、ユウトがフィロメラファミリーに加入したのもその時。ユウトはフィロメラファミリー創設当初からのメンバーであり、数少ない、ヒョウカのことをよく分かっている人でもある。この二人の信頼関係はかなり強いのだ。
「……あまり比べるな」
はい、とユウトの淡々とした声。彼らしい声だなと思ってヒョウカがかた頬を上げた、
その時———
バンバンと耳を劈く銃声と、そして————
悲鳴が轟いた
ヒョウカはその声が聞こえた瞬間立ち上がり、カーテンを開いた。
夕日が眩しくて、一瞬目を閉じかける、がそんな暇はないと無理やり目を開ける。
眩しくて目がちかちかしだし、少し瞬きをしても夕日の名残が瞼の裏を明るくさせる。
そんな中、視界に飛び込んできたのは、燃える家と、銃を持つスーツ姿の男たち。
「……くっそ……!!」
ヒョウカは苛立ちを表に出しつつ、部屋から飛び出す。ユウトもその後ろについて廊下を駆けだした。
ヒョウカがモルゲンレーテの入り口を飛びだした時には、すでに辺りは騒然としていた。五月蝿いなんてものじゃない。悲鳴と銃声の違いも分からないほどの音量が辺りを埋め尽くしている、異常というべき状態だった。
「戦闘部隊は!?何が起こっている!!」
逸早く状況を把握する為にユウトがそこにいた戦闘部隊の隊員に罵声じみた声を上げる。
「情報がほとんどありません!!先ほどまでは何もなかったのに、急にあいつらが銃を……!住民に怪我人が出ているとのことで、救護部隊が大勢出ています!事務所内の医務室に運ばれていると!」
そこまで一息で言った隊員の服には血がにじんでいた。彼に怪我をしている様子はないので、その住民の救護や搬送にでも当たったのだろうとユウトは頭の片隅で見当をつける。
そして彼が指差した方を見れば、先ほどヒョウカの部屋の窓から見えた、スーツの男たちがいた。どうやら、あいつらを倒さなければならないらしいが、それより今はこれ以上の怪我人を出さないことが先決だ、といつも腰に装備している銃を引き抜いた。
「敵の目的は不明のようです。こちら側の住民に怪我人が……」
銃を構え、引き金に指をかけつつ、早口にヒョウカに報告をした。
それを聞いた途端、ヒョウカの気配が変わる。
スッと背筋が冷える感覚にユウトは反射的にヒョウカの方を見た。振り返りざまにヒョウカ向けて銃を構えていた男の右肩に弾丸をお見舞いしてやる。
今日一発目の銃弾は見事にそいつの右肩を貫いたらしく、男が後ろに仰け反る様に倒れていくのが視界の片隅に入る。しかし、ユウトが本当に気にしているのはそいつが倒れたかではなく、自分の近くで銃も構えずに立っているヒョウカだった。
ただ、立っているだけなのに恐ろしい殺気を放っている我らがボスに声をかけようとするが、如何せん声が出てくれない。くそっと心の中で毒づき、また引き金を引く。
敵は分かっているのだから、そいつらの殲滅を優先だ、と脳内で決定を下し、近くにいるであろう戦闘部隊の連中に届くように声を張る。
「敵の殲滅と住民の避難を最優先させろ!!奴らは出来るだけ殺すな!あとで事情を聞くからな!しかし……」
そこから先の声は先ほどよりも小さかったが、十分恐ろしさは籠っていた。
「倒れてもこちらを攻撃してくれば、殺してかまわん!」
そう言ってユウトはまた引き金に指をかけた。
そして、ユウトの後ろの気配が、また一段と濃く、重くなったと感知した途端、ユウトの後ろにいた女帝が、銃と剣を引き抜き、構える音が、小さくもひどく鮮明に、重々しく響いた。