二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【短編集】True liar【inzm】オリキャラ募集中! ( No.86 )
- 日時: 2012/05/04 02:33
- 名前: 海穹 (ID: F08K/Z64)
- 参照: イナイレ関係でもないただのオリジナル小説。そして意味深な上に意味不。
突発オリジナル小説
「煌きと闇への陶酔を」
「ねえ、一体、正しいってなんだと思う?」
ガタガタと車輪が動く音の中、君が至極真面目な口調でそう問うてきた。
どうしたんだろうと思って顔をあげて顔を見るけれど、その目的の顔は窓の外、煌きと闇の海に向けられていてしっかりと見ることは叶わなかった。少し考え込んでから問いに返してみる。
「正義であること、かな」
「じゃあ正義って?」
間髪いれずにまた問いが来る。その君の声は何処か切羽詰まっているような気もして、なぜか僕の中で焦燥を生んだ。
「……護ること、かな」
「護ることが正義なの?」
彼女の言葉はひどく真面目なのに、何処か焦っていて、何かに追い詰められているようで。何でそんな風になっているのか僕には分からなかった。君の言いたいことが、全く分からないのだ。
「護ることは確かに正義かもしれないけど、でもそれは傍から見れば、だよ」
君はそう言いながらも、ただひたすらに窓の外を見つめる。その姿はなぜか焦燥を感じた。その目は、ひどく穏やかなのに。ひどく優しいのに。
「傍から見れば?」
「うん。だって、もし変身したヒーローが私たちを護ってくれて、私たちはその人たちを正義だって思う」
そこで相槌を一つ。
「でも、私たちを襲って来た人たち側の人たちにとって、その私たちを助けてくれたヒーローは正義か話」
淡々と君はそう言った。
そして、僕は、なぜかその話の深いところに入り込むこと躊躇われた。
「違うよね。私たちから見たらヒーローだけど、その襲ってきた悪い人たち側の人にすれば、その人が悪だよね」
そう思わない?
その時、やっと君はこっちに顔を向けた。そして、その瞳を見た僕はなぜか怖くなった。
世界の深淵でも見てきたかのような深い深い黒。漆黒と言ってもまだ足りない色をしたその瞳。しかし、その中にはほんの少しだけ煌く光が見えた。その瞳はまるで、さっきまで君が見ていた窓の外のようで。
「……うん、そうかも、ね」
なぜか言葉に詰まってしまっていた。
そこにいる君は、僕が知る君ではない気がしたから。
「……結局、一番いいのは中立なんだなって思っちゃったよ。今まで、全く思ったことも無かったのに」
不思議だね、なんでだろ。
その声に滲む悲しみに、気付きたくなかった。
気付いてしまったら、泣いてしまいそうだったから。
「それだけ、疲れちゃったってことのかな」
君はそう言って窓に凭れかかった。その自然なしぐさに、気がつけば向かいあっていた席から移動していた。
不思議そうな顔をする君を横目に、僕は君の隣の席に腰かけ、君の顔を腕を使って僕の肩に寄せた。少し驚いたように身じろぎしたけれど、すぐに凭れかかってくれる。
「ねえ、これから行く世界に“アサ”ってあるかな」
今度の口調は優しい。素朴な疑問を何気なしに聞いてくる、そんなものだった。
「分からないよ。でも……」
きっと、向こうほど寒くはないよ。
君は嬉しそうに笑う。
その姿が、ずっと望んできた温かくて優しいものだったから、嬉しさが込み上げて来て、気がつけば一筋、頬に濡れた何かが伝っていた。
拭わなければ、恰好悪い。腕を持ち上げかけた時、視界に入った君の頬にも同じものが伝っていた。
あぁ、拭わなくてもいいか、と思いなおして。
そしてそのままゆっくりと目を閉じてみる。
閉じる前に窓の外から見えた煌きと闇の海は美しく、そして壮大だった。
煌く星々はこれ以上は数えるのも億劫になるほど浮かんでいて、闇は何処までも広がっている。途切れないその海、宇宙は、僕等を優しく受け入れてくれる気がした。
眠ろう、終点の草原まで
君と優しい夢を分かち合いながら
彼が目を閉じ、眠りについた少し後、近くの銀河の中心にある、大きな大きな恒星から、光が零れた。
その光は列車の車体も、椅子の革も、そして彼らの頬に伝う美しい涙も照らし、煌きを与えた。
“アサ”が、“アサヒ”がすべてを照らした。彼らを祝福するかのように。
列車は乗客を乗せて、行くべき終点まで駆けていく
何もかもを乗せて、ただひたすらに、宇宙と言う壮大なる場所を
——————生きることへの陶酔とともに