二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 現代版★少年陰陽師 ( No.8 )
- 日時: 2012/04/17 19:56
- 名前: 羽月 (ID: 7H/tVqhn)
昌浩は素直だ。非常に素直だ。
そして、それは良いことなのだ。
しかし、それが困ることもある。
それが今だ。
昌浩は先程陰陽師の仕事を終わらせ、今は安倍家に帰るため、ひたすら歩いている。
しかし、仕事中はずっと思い詰めた表情をしていた。それはもう、一目見ただけで分かるような表情をしていた。
そしてそれは、仕事が終わった今現在も同じである。
だがしかし、それだけならまだ良かった。
それが今は、ぶつぶつと一人言を言い始めたのだ。それをよくよく聴くと、「彰子が変」だとか「みんな怪しい」だとか。
物の怪はその「みんな怪しい」理由を知っているのだが、それを言うことは出来ない。なぜなら、物の怪も共犯者だからだ。
だから、たとえどんなに昌浩が物の怪を問い詰めようとも、物の怪は答えることは愚か本の少しのヒントを与えることも出来ない。
だからだ。
昌浩がぶつぶつと一人言を言うと、物の怪はいつ自分に話が振られるかとびくびくしているのだ。話を振られたら終わりだ。
きっと昌浩は、自分が納得するまで物の怪に尋問してくるだろう。
昌浩を見ると、教えてあげたい気持ちも山々なのだが、やはり駄目だ。もし自分が秘密をばらせば、彰子が悲しむ。彼女が悲しめば、その原因である物の怪を責める。だが、それだけではない。何より、昌浩自身のためだ。
だから、あと少しだけ、昌浩には我慢してもらおう。
しかし、人生というものはそう上手くいかない。
なぜならば。
「ねぇ、もっくん」
昌浩は、自分の脳内にあった疑問をとうとう口に出そうとしていた。
物の怪は、内心焦りながら、平静を装った。
「んー?なんだ?」
そして案の定。
「うん…。彰子、何を隠してると思う?」
「…えっ!?」
自分の予想とまったく同じ質問をしてきた昌浩に驚いて声をあげた。それと同時に、焦燥感が胸のうちに広がっていく。
そして、昌浩はそれを見逃さなかった。
「…怪しい」
じーっと昌浩が物の怪を見つめる。疑いの眼で。
「気のせいだよ!」
物の怪は誤魔化すようにそう言って、走り出した。
「帰るぞ!昌浩!!」
「うーん………」
後ろで昌浩が不満そうに唸っていたが、物の怪はそれに気がつかないフリをして走り続けた。