二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 現代版★少年陰陽師 ( No.9 )
日時: 2012/04/18 19:00
名前: 羽月 (ID: ErSo6VVm)

「ただいまー」
そう声をかけると、今日一回目の帰宅の時とは違う人物が現れた。
「お帰りなさい、昌浩」
「天一…っと、勾陣は?」
昌浩が帰宅したときには大抵の場合、勾陣が姿を現す。しかし、今回は天一であった。
「勾陣は買い物に行っているわ。彰子様と一緒に」
天一が言った最後の言葉を、昌浩は聞き逃さなかった。
「彰子と一緒に?」
勾陣が買い物に行くのは珍しい。普段は安倍家で留守番をしている方が多い勾陣だ。
「何を買いに行ったんだ?」
昌浩の素朴な疑問に、天一と、昌浩の足下で黙って話を聴いていた物の怪に動揺が走った。
「天一…?」
昌浩が何かを感じ取ったのか、不信げに彼女の名前を呼ぶ。
と、そこに。
「たあ!」
バシッと良い音がする。と同時に、昌浩の頭に痛みが走る。
「いっ……たぁ!何するんだよ、朱雀!!」
昌浩が顔を上げると、片手に竹刀を持った朱雀が据わった目で昌浩を見ていた。
「『何するんだよ』じゃ、ない!俺の天貴と仲良さげに話しやがって!許さねぇぞ!天貴から離れろ!!」
しっしっと虫を追い払うような仕草をする朱雀を見て、昌浩が怒鳴った。
「うるさい!何なんだよ、朱雀!ちょっと天一と話してただけだろ!!」
「だーかーらー、それが駄目だって言ってるんだよ!散れ!!」
「黙れ、黙れ、黙れぇぇぇぇい!!」
そんな二人の口喧嘩を、物の怪は半眼で、天一は苦笑いで聞いていた。
「おいおい、なんだか騒がしいのぅ。昌浩や」
「あ…、じい様」
昌浩が呟く。
「まったく何でそんな大声を出しているのじゃ?昌浩」
「それは…、朱雀が——」
それを遮って、朱雀が不満気な顔で言う。
「『朱雀が』?俺のせいにするのか、昌浩」
「………」
昌浩はそれに対して、無言で朱雀を睨んだ。が、それを晴明に咎められる。
「昌浩、そのように人を睨み付けてはいかんだろう」
「………」
「返事は?」
「……………はい、すみませんでした!」
昌浩の顔筋に青い血管が浮き上がっているのを知っているのかいないのか、孫である昌浩を、晴明は好きなだけおちょくる。
「なんじゃ、その謝り方は。もっと反省の気持ちを表さんかい」
「あー、はい!そうですね!」
「ほっほっほっ、まだまだじゃのう」
実に愉快そうに晴明が笑う。
と。
ガラリと玄関の扉が開いて、買い物に行っていた彰子と勾陣が立っていた。
「…彰子!」
「なんだ、こんなに集まって。私達のお出迎えか?」
勾陣が形容しがたい顔で言ったのに、物の怪姿から人身をとった紅蓮が応えた。
「そうではないけど…なぁ」
一方で、昌浩は彰子を問い詰めている。
「彰子、どこ行ってたんだよ」
「ちょっと、買い物に。でも、大丈夫よ。ちゃんと、勾陣と一緒に行ったから」
「そりゃ、そうだけど…」
勾陣は十二神将で二番手の強さだ。ちなみに、十二神将最強で最凶なのは騰蛇——紅蓮だ。
「まあまあ、こんな所で立ち話もなんだから、中に入りなさい」
晴明がその場にいる全員に声をかける。そして。
「ああ、そうそう。昌浩には仕事の報告をしてもらうから、わしの部屋においで」
ニヤリと晴明が笑ったのを、その場にいた全員が気付いた。
ただ、その意味は昌浩には解らなかった。