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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 少年陰陽師パラレル現代版★短編集 ( No.129 )
- 日時: 2012/07/22 08:15
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: AzXYRK4N)
闇の中にがらがらという音が響き渡る。しかし、それは徒人にはどれほど耳を澄ませても聞こえない音だ。
「…ったく、逃げ足の速い妖だなぁ」
物の怪はぼんやりと呟き、大きな欠伸をした。その瞬間、乗っていた妖車ががったん、と揺れた。
「ぁい…った! 舌噛んだぞ!」
目に涙を浮かべながら訴える物の怪だが、隣に座った昌浩は全く反応しない。
普段ならここで何か言ってくるはずなのだが、今の彼は何も言わない。それどころか、物の怪に視線も向けない。
「…おーい、どうしたー?」
舌の痛みを我慢しながら物の怪が訊く。しかし、昌浩は全く反応を示さない。
「おい、昌浩? 昌浩!」
さすがにおかしいと感じた物の怪が鋭い声で彼の名を呼ぶと、はっと我に返ったように辺りを見回し、それからのろのろと物の怪を見た。
「どうしたんだ? …昌浩——」
「……え…っと、何か嫌な予感がして——」
「——予感?」
物の怪は昌浩の言葉を反復した。
昌浩は陰陽師だ。そして、陰陽師の勘は鋭いのだ。放っておいて良いものではないだろう。
そう伝えると、昌浩はこくりと頷き、目を閉じた。
「……———」
昌浩ははっと目を開くと叫んだ。
「彰子…、彰子が、危ない——っ!!」
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