PR
二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 少年陰陽師パラレル現代版★短編集 ( No.130 )
- 日時: 2012/07/25 15:49
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: aMIPEMQ3)
遅くなりすぎてしまった。
「…どうしよう——」
彰子は小さく呟いて、歩く足を少し速めた。
辺りはすでに真っ暗になっていて、人影も全く無い。
今日は塾だったのだ。いつもなら明るいうちに帰ってこれるのだが、解らないところがあり、それを教えてもらっていた。そして、気が付くともう陽は沈んでいた。
「…近道——」
彰子は立ち止まって山の中へ続く獣道を見た。草木が生い茂っているなか、細い人が一人通れるほどの道が一本あるのだ。
こちらに行けば、安倍家の裏に出るはずだ。幼い頃、昌浩と遊んでいるときに見つけた、二人だけの秘密の近道。
「……」
駿巡した後、彰子は山の中へ入っていった。
ここはあまり良い空気ではない。それは、彰子や安倍家の者——つまり見鬼の才を持つ者にしかわからないことだが、それさえあれば禍々しい空気は痛いほどに伝わってくる。
本当はこんなところは通りたくなかった。しかし、帰りが遅くなってしまうと、みんなに心配をかけてしまう。そんなことはしたくないのだ。
だから、近道を通って、速く帰ろう。
あの、家へ。
そのとき、後ろで物音がした。
「———っ…」
気のせいだ、と思った。気のせいだと、思いたかった。
禍々しい空気が、より一層禍々しくなり、吐き気がしてくる。
たすけて、と。
唇を僅かに動かせた。
その瞬間、激痛が彰子を襲った。
PR