二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師パラレル現代版★短編集 ( No.146 )
日時: 2012/08/24 10:40
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: nOUiEPDW)
参照: http:/

 昌浩の術によって、妖怪は全て退治された。
 当の本人は、霊力を全て使い切り、その場に力無く倒れ込んだ。
「………おいおい、大丈夫かぁ? 晴明の末裔」
 いつの間にか物の怪姿に戻った紅蓮は、笑いながら訊く。それに対して、昌浩は半眼になった。
「………末裔、言うな」
 そこに、彰子が駆け寄ってくる。
「昌浩、大丈夫?」
「彰子……大丈夫だよ。ごめん、心配かけて」
 半身起こして、にこりと笑うと彰子は申し訳なさそうな表情をした。
「私がこんな山に入ったから、だから、こんな——」
「違うよ」
 昌浩が、彰子の頭にぽんと右手を乗せた。
「彰子がここに来なかったら、この妖怪に気が付いて無かったよ。そしたら、もっと一般人が襲われてたかもしれないし……」
 よしよし、と彰子の頭を撫でる。
「だから、彰子のお陰だよ」
「……昌、浩——」
 彰子は昌浩に抱きついた。
 昌浩は目を見張った。そして、顔を真っ赤にする。
「………あらあら」
 昌浩の顔を見た物の怪は、にまぁっと笑い、勾陣の肩に飛び乗った。
「……何で私に乗ってくるんだ」
 勾陣が不満げに言ってくる。
「何だよ、別に良いだろ」
「良いけど——」
 左肩に物の怪が乗っているから、勾陣は顔を右に向けた。
「……あー、なぁ、勾」
 物の怪が、猫か犬のように首元をわしゃわしゃと後ろ足で掻いた。
「お前、最近俺のこと避けてないか?」
「あぁ、そうだったかもしれないな」
 思い出したように言った勾陣に、物の怪は半眼になった。
「………なんだよ、それ」
「もう吹っ切れたよ」
 鼻で笑い、それから物の怪をわしゃわしゃと撫でた。
「それより、早く帰らないと行けないんじゃないか?」
 勾陣がついと指を差した先には、白い鳥。
「……式」
 ぽつりと呟いて、まだ赤い顔をして呆然としている昌浩の側に行く。
「おい、昌浩、彰子。仲良くしているところ、悪いんだが」
「もっくん!?」
 昌浩が物の怪を見る。物の怪は黒い爪で白い鳥を差した。
「あれ」
「『あれ』? ——げ、式」
 踏み潰された蛙のような声を出す昌浩。
 白い鳥は一枚の紙となって、ひらひらと落ちてくる。それを掴んだ昌浩は、ばっと広げて無言で読む。
 昌浩の額に青筋が浮かび上がる。紙を持った手は怒りを堪えるかのようにプルプルと震えている。
「……昌浩——?」
 彰子が遠慮がちに彼の名を呼んだ。
「あぁんの、クソ爺————っ!!」
 昌浩は大声を出し、その紙を破った。
「あーぁ、今日も平和だねぇ…」
 物の怪が呟くと、勾陣は嘆息を吐き、彰子はにこりと微笑んだ。