二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 少年陰陽師パラレル現代版★短編集【参照200突破】 ( No.25 )
- 日時: 2012/04/21 02:32
- 名前: 羽月 (ID: 4dKRj7K1)
とある一日。
「行ってきまーす!」
どたばたと足音が遠ざかっていく。
昌浩と彰子、それに物の怪姿をした同胞が、学校へ行った。
今日も、一日が始まる。
「天貴!」
天一が庭で洗濯物を干していると、朱雀が声をかけてきた。
「何?朱雀」
「俺も、手伝うよ」
にっこりと笑って言う朱雀に、天一は微笑んだ。
「ありがとう」
「おう!…ってか、俺が全部やってやる!天貴はそこで休んでろ」
「……ええ」
一瞬迷ったあとに、朱雀の言葉に甘えることにした。
縁側に腰を下ろし、洗濯物を干す朱雀の姿を見ていた。
「…っと、よし!終わったぞ!天貴!!」
にっこりと笑う朱雀に、天一も笑顔を向ける。
「ええ、ありがとう」
「こんなの簡単なことだぜ!」
「…それより、朱雀。私、今日の夕飯の材料を買いに行くわ」
「え………?」
突然の天一の言葉に、朱雀は思わず固まってしまう。
「何を作ろうかしら…?」
ぽつりと呟く天一に、朱雀は言った。
「俺も一緒に買い物に行くよ!!」
と、いうわけで。
朱雀と天一は今、安倍家から徒歩十分ほどの場所に位置するスーパーマーケットにやって来ている。
「ねえ、朱雀。晩御飯は何が食べたい?」
「俺は、天貴の作る料理なら何でも良いよ」
「朱雀ったら…」
実際に朱雀が食べるわけではないのだが、そんな話をして二人でイチャイチャしている。
「…って、何なのよ、あの二人」
一緒に買い物に着いてきた太陰が呟いた。それに対して、同じく二人に着いてきた玄武が答えた。
「仕方がないだろう。あの二人は、仲が良いのだから」
買い物が終わり、現在は安倍家のキッチンで、天一が晩御飯を作っている。
朱雀は、自分は料理が不得意だと自覚しているつもりなので、これには手伝いもせず、ただ黙って天一のことを見守っている。
しかし。
「ねえ、朱雀…」
「なんだ?」
「あんまり見られると、やりにくいんだけど………」
朱雀は天一のことをじーっと見ているので、天一の気持ちもよくわかる。だが。
「仕方がないだろう!?他に何もすることがないし!」
「確かにそうだけど…、…って痛!」
天一が突然痛みを訴えるので、朱雀は慌てて天一に駆け寄った。
「大丈夫か?どうしたんだ?」
「あ…、ちょっと包丁で指を切っただけよ」
「見せてみろ」
天一の左腕を掴み、指先をまじまじと見る。すると。
「あぁ———っ !! 血が出てるぞ !! 」
大声で言う朱雀に対し、天一は冷静に返す。
「大丈夫よ。こんなの、すぐに治るわ」
「でも!天貴の綺麗な指が !! 」
朱雀は半ばパニック状態になっている。
「天貴!ちょっと待ってろ !! 絆創膏を取って来てやるからな !! 」
言うや否や、朱雀は慌ててその場を立ち去る。そして、ものの数秒で戻ってきた。
「はい!天貴!あ、でも先に水で血を流せ!」
天一は言われた通りに、水道水で血を流す。が。
「——痛…っ」
「大丈夫か!?」
「ええ、ちょっと水がしみただけ…」
笑って言う天一だが、朱雀は叫んだ。
「あああああっ!すまない!天貴!俺が水で流せなどと言ったから…!」
「……………あ、いや、本当に大丈夫よ」
「それより!手当てが先だ !! ほら!手を出して!」
朱雀は天一の切り傷に消毒液をつけ、それから絆創膏を貼った。
「はい!これで、もう大丈夫だ !! 」
「ただいまー…」
昌浩と彰子が学校から帰ってきたようだ。
朱雀と天一は二人を出迎えに行った。
「お帰りなさい。昌浩、彰子様」
「…って、どうしたんだ?二人共………」
朱雀が驚くのも無理はない。
二人共 、濡れ鼠のようにびしょびしょになっていた。
「学校からの帰り道、通り雨がきたのよ。今はもう止んでるけど…」
「傘も持ってなかったから、濡れちゃった…」
「まったく、どんくさいなぁ…」
呆れ顔で言う朱雀の隣で、天一は顔面蒼白で呟いた。
「洗濯物が…!」
朱雀と天一が慌てて庭へ出ていくと、洗濯物はすべてびしょびしょに濡れていた。
「天貴!すまない!」
ひたすら謝る朱雀だが、朱雀は何も悪くない。
「だから、そんなに謝らないで…」
「でも…! 俺がもっと注意をしていれば…」
「朱雀、貴方は悪くないわ。気がつかなかった私だって悪いわ」
「天貴……。これからは俺、もっと気をつけるよ」
「ええ。私だって、もっと気をつけるわ」
その二人の様子を見ていた昌浩が呟いた。
「仲良いね………」
日は沈み、今は綺麗な星空が見える。
それを縁側で見ていた天一の隣に、朱雀もやって来て腰を下ろした。
「あんまりずっと見てると、冷えるぞ」
心配気に言う朱雀に、天一はにっこりと微笑んで答えた。
「大丈夫よ。それに… 星が綺麗だから——」
夜空を見上げる天一に倣って、朱雀も顔を上げた。
しばらく無言で星空を楽しんでいた二人だが、その沈黙を天一が破った。
「…ねえ…、朱雀——」
「なんだ?」
少しの間があって。
「朱雀は、ずっと私の傍にいてくれる?」
「…天貴——」
見ると、天一の儚げな瞳が、朱雀をまっすぐに見つめていた。
「もちろんだ。天貴——」
彼女の肩を強く抱いて朱雀が答えた。
「…ありがとう」
小さく呟いて、天一は目を閉じた。