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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 少年陰陽師パラレル現代版★短編集 ( No.52 )
- 日時: 2012/04/30 18:07
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: CMSJHimU)
優しく、切ない、夕焼け色
靴箱で、上靴から運動靴へと履き替え、そのまま、校門へと歩いていく。
辺りに生徒は誰も居なく、昌浩と物の怪二人きりだ。
今は、ちょうど夕焼けだ。
「ねえ…、もっくん」
昌浩は、一歩先を歩く物の怪に声をかけた。
「なんだ?」
物の怪が振り返って訊いてくる。そして、夕焼け色の大きな瞳は、ちゃんと自分を見てくれている。
「…———」
物の怪は、いつもそうだ。昌浩が呼べば、何をしていたって返事をしてくれる。自分のことを見てくれる。
「おいおい、何だよ」
半眼になって物の怪が言う——優しく、笑いながら。
「うん。何でもない」
にっこりと笑って昌浩が答えると、物の怪は「はあ?」と言って、再び前を向いて歩き出す。
「…——」
幼い頃に、晴明に訊いたことがある。
「何で太陽は、あんなにきれいになるの?」と。
時間ごとに、違った姿を見せる太陽。
それを聴いた晴明は、優しく笑って答えてくれた。
——それは、太陽が優しいから
だから。
もっくんの瞳も優しい。そして、切ない。
夕焼けよりも、もっと儚げな瞳。
自分は、それが好きだ。
そして、もっくんのことも。
何があっても、自分の傍にいてくれる、物の怪のことが。
「もっくん——」
「何だよ——って、うわっ!」
昌浩が物の怪を抱き上げると、物の怪は慌てたように言った。
「急に何してんだ——」
しかし、昌浩はそれを遮った。
「ほら、もっくん。夕焼けが綺麗だよ」
「……———」
「もっくんとおんなじだ。…優しい夕焼け色」
「優しい…?」
物の怪の漏らした言葉に、昌浩は頷いた。
「うん。優しいよ」
優しく、切ない、夕焼け色。
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