二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 少年陰陽師パラレル現代版★短編集【参照500突破】 ( No.73 )
- 日時: 2012/05/05 02:57
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: 4dKRj7K1)
こどもの日
「昌浩ー。今日は、子どもの日よー」
安倍家の縁側に腰かけた太陰がそう言うと、彼女の隣に腰かけていた、小さな子どもがキョトンとして、太陰を見つめた。
「こどもの、ひ?」
「そ、子どもの日」
「こどものひ、て、なぁに?」
首を傾げて幼い昌浩は訊いてくる。
「あー… 。子どもの日は、子どもの日よ」
「うー?」
太陰の適当な説明に、昌浩は渋い顔をした。
「 …太陰。それでは昌浩が分からないだろう」
それまで黙って二人の会話を、昌浩の隣で聴いていた玄武だが、半眼になって言った。
「だったら、玄武はちゃんと説明出来るの?」
不満そうな表情で言ってくる太陰を一瞥して、玄武は簡潔に答えた。
「子どもの成長を祝う日だ」
「 ……… 」
「あと、母親に感謝する日でもあるな」
「……………」
太陰が無言で、しかし、悔しそうな表情をして、玄武を睨む。
「たーいん、だめだよ。おこっちゃ」
「え、あ。怒ってた?」
「うん」
「あ… あはは」
笑って誤魔化す太陰を見て、玄武は小さく溜め息をついた。
「まったく、太陰は——」
「何か言った? 玄武」
「 …いや」
そこに、六合が現れた。
「柏餅、食べるか?」
見ると、六合は右手に持った皿に、たくさんの柏餅を積んでいるではないか。
「食べるけど… 、どうしたの? そんなにたくさん」
半分呆れ気味に太陰が訊く。玄武もこくこくと頷いた。
「それが… 、少し作りすぎたみたいでな」
「全然『少し』じゃないわよ」
「おもちー」
昌浩だけが、嬉しそうだ。
「ま、良いんではないか?」
玄武が言った。
「子どもの日の主役は、子ども。その子ども——昌浩が喜んでいるなら」
「 …… 」
確かに、昌浩は喜んでいる。笑っている。
ま、良いか。
「よし! あたしたちも食べるわよー!」
「喉に詰まらせるんじゃないぞ、太陰」
しかし、玄武がそう言ったそばから、太陰は喉に詰まらせてごほごほと咳をした。
「 …まったく… 、言わんこっちゃない」
そう呟いて、玄武も柏餅を口にした。