二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師パラレル現代版★短編集 ( No.75 )
日時: 2012/05/05 14:01
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: iP.8TRIr)

「おい、彰子… 」
 呼ばれたので振り返ると、そこには勾陣が心配そうな表情をして立っていた。
「あ… 、勾陣も、ここに来てたの?」
 平静を装って彰子は訊いた。しかし、勾陣には見抜かれていた。
「何かあったのか?  …昌浩と」
「——うん… 」
 小さく頷くと、勾陣は「はぁ」と溜め息を漏らした。
「まったく、昌浩の奴、何をやっているんだか——」
「ううん。昌浩は悪くないの」
 その言葉に、勾陣は目を見張った。
「 …何故だ?」
「私が、悪いの」
 勾陣は、黙って先を促した。
「私が、一人で勝手にイライラして。昌浩に、もっとしっかりしてほしいって、そう、思って …! 何か、自分でもわからないの… !」
「 …まぁ、安倍の人間は、皆そんなものだよ」
「え …?」
 彰子が勾陣を見つめる。
「皆、秘密を隠してるし、どこか頼りないし …。女には、心配ばっかかけるけど」
「でも、それは、陰陽師だからでしょう?」
 陰陽師は、その文字通り、陰と陽を持っている。だから、昌浩にも陽があるだけ、陰がある。そして、陰陽師はそれを隠す。陰は、不幸を招くから。
「陰陽師だから… っていうのもあるかもしれないけど、でも、それ以上に隠し事をしているよ」
「 …?」
 勾陣は口元に、笑みを見せながら言った。
「それはな——、大切な人を傷つけたくないから」
「大切な人を、傷つけたくないから——?」
「そう、安倍の男は昔から女を大切にしすぎなんだよ。本当は、あいつらが思っているよりも、強いものなんだけどな」
「——…」
「だから、まあ、とにかく、昌浩は彰子を大事に思ってるんだよ。本当に」
「そっか…」
 すると、そこに昌浩が現れた。
「彰子 …!」
「昌浩! どうしてここがわかったの?」
 首を傾げる彰子に、昌浩は笑って答えた。
「わかるよ。だって、大切な、人だから——」
 ああ、本当に。
「彰子、さっきは、ごめん。俺、彰子が行きたい所ならどこでも良いと思って——」
 本当に昌浩は私のことを大切に思ってくれている。
「もっと、引っ張っていってあげないとね」
 昌浩は、笑って言う。
「彰子、観覧車に乗ろうか」
「うん!」
 彰子も笑って答える。
 やっと、彼女に笑顔が戻った——。