二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師パラレル現代版★短編集【参照700突破】 ( No.97 )
日時: 2012/05/21 19:47
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: jADmD8Xa)

   金環日食

「彰子、見える?」
「うん、すごい!」

 本日、2012年5月21日、朝7時頃。
 世間を騒がせている、あの出来事。
 東京の一角にある安倍家でも、話題になっていた。
 ——金環日食。

「わあ、どんどん欠けてくる!」
 彰子が、日食グラス越しに太陽を見て、嬉しそうに声をあげる。

「はー、微笑ましいねぇ… 」
 昌浩と彰子がいる縁側から離れた所で二人を見ていた物の怪が、感慨深そうに呟いた。
 今日は、月曜日で学校があるのだが、昌浩と彰子が通っている清涼学園は、二日前の土曜日にテストがあったという理由で休みになっていた。そこで、昌浩と彰子は、朝から金環日食を安倍家で楽しんでいるのだ。

「本当に、神秘的ね… 」
「そうだね」

 きゃはきゃはと楽しんでいる二人を邪魔しないよう、物の怪は遠くから見守っている。

「そろそろ、ゴールドリングが出来るかな?」

 ゴールドリングとは、太陽の中心辺りに月が来て、太陽の光がリング状に出来る現象だ。
それは特定の地域でしか見られないが、ちょうど東京は観察することが出来る。

「楽しみー」
「はやくならないかしら?」

 天気は、雲一つない晴天。

「あ、なったわ!」
「お、すげー」
「綺麗ね」
「あ、彰子」
「何?」
 彰子が、視線をゴールドリングから昌浩へと移す。
「これ、あげる」
 そう言って昌浩が差し出したのは、指輪だった。
「可愛い!  …でも、どうしたの?」
 今日は、プレゼントを貰うような特別な日ではないはずだ。
「 …だって、今日、金環日食でゴールドリングが出来るだろ? だから——」
 顔を赤らめて言う昌浩に、彰子はにっこりと微笑んだ。
「嬉しい、ありがとう」
「つけてあげるよ」

「 …お?」
 遠くから二人を見ていた物の怪が目を見張った。

「ありがとう。昌浩」
「どういたしまして」

「あれ、左手の薬指じゃねえかよ」
 左手の薬指は、結婚指輪をはめる指だ。
「はっはっはっ」
 きっと、馬鹿で鈍感な昌浩は気付いていないのだろう。

   ☆★☆

「ただいま—… 」
 そう言って帰ってきたのは、十二神将、金将、太陰と白虎だ。
「おー、おかえり」
 物の怪が白い尾をぴしりと振って返すと、疲れた体の太陰は言った。
「 …ったく、なんで金環日食なんかのために、あたしたち風将コンビが雲を吹き飛ばさないといけなかったの !? 」

   ☆★☆