二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【イナGO】君を護るために俺は夢を見る ( No.2 )
日時: 2012/04/23 21:54
名前: 異識 (ID: JzqNbpzc)
参照: 元・琴葉です!

第一章 棺を引く少女



  第一話





「よし、じゃあ今日の練習はここまで!
 自主トレしたいって奴は、7時には家に帰れるようにしろな!」



 河川敷のグラウンドに響くのは、雷門中サッカー部の監督、円堂 守の声だ。



「お疲れ様でした、先輩!」

「ああ、気を付けて帰れよ」



 お互いが思い思いに会話をし、家路につく中——



「あれ、剣城?
 今日は自主練しないの?」

「……ああ。
 久々に、兄さんの様子を見て帰ろうかと思ってな」

「そっか。
 そういえば、全国大会やってる間忙しかったもんね」



 天馬の言葉に、京介が小さく頷く。




「じゃあ、俺はもう少し練習していくから。
 気を付けて帰りなよ!」

「……ああ」



 京介は一瞬だけ柔らかく微笑み、河川敷を後にした。





                  ★





「なくしーた、ものはー、なーんーでしょう……」



 病院へと向かう途中、誰かの歌声が耳に届いた。



「(こんな時間に……?)」



 刹那——



「……?」



 誰かが自分の横を通り過ぎたのが分かる。
 慌てて振り向くと、そこには——



「—————?」



 小柄な少女が居た。
 モノトーンを基調としたブラウスとスカート。
 左右非対称アシンメトリーな長さのボーダーソックスと茶色のローファー。
 帽子には左右に大きな安全ピンのようなものが付いていて、月の光を反射して鈍く光っている。
 雪のように白い肌に、端正な顔立ちをしている。
 宇宙の神秘を秘めているかのような青の瞳が光っていた。
 腰の辺りまで伸びた銀髪は、まるで穢れのない天使の心を映したかのようだ。


 そして何より目を引くのが、彼女が背負って歩いている物体である。
 自分の身長を優に越した縦長の箱。
 八角形を縦に伸ばした形の、木の箱。
 死者の眠る箱——棺だ。


 京介はしばらく少女に見惚れていた……のだろう。
 仮定形なのは、京介自身も無意識に彼女を見つめていたからだ。



「——————————」



 彼女は一言も発することなく、京介とは反対の方向へ歩いて行った。



「なくしーた、ものはー、なーんーでしょう……」



 無くしたモノは何でしょう
 棺の中に閉じ込めて
 看取られることも無く
 独り眠るでしょうか










—————哀しげな歌声を残して。