第三十四話葬式が終わり、参列者も家へと帰っていき。式の時の重苦しい雰囲気と違う、物悲しい、ぽっかりと穴の開いたような家の中で。時子は銀也の部屋へと入る。銀也の部屋はしっかりと整えられていて、机の端にぽつんと、一通の手紙が置いてあった。この間は気づかなかった手紙。宛先は、坂田時子さま。それだけ書いてある封筒を手に取り、時子は中の便せんに目を通した。しばらくして。声も上げずひっそりと、時子の頬を静かに涙が滑り落ちて行った。