二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:  風の守護者とプリンと風紀、 / REBORN  ( No.32 )
日時: 2012/05/21 16:45
名前: なゆ汰 ◆TJ9qoWuqvA (ID: 6vo2Rhi6)

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 標的11 / 過去の自分に決別を




『——新入生の皆様、ご入学おめでとう御座います。春のうらら、桜が咲き誇る今—』



並盛小学校入学式。私たちはつい1ヶ月ほど前、幼稚園を卒業した。長ったらしい校長の話を受け流しながら瞼がおりてくるのを必死でとめる。男子の列の方に座る恭弥くんも眠いのか、カクンカクンと頭が動いていた。見事恭弥くんとは同じクラスになれた(ちなみに1年1組だ)。それより2回目の小学校というのは面倒くさい。小学校の勉強なんてつまらないものだ。だって転生前、元の世界では小学校だって中学校だって卒業していた。わかりきったことを何回もするほど面白くないことはない。



『我が校が生徒と共に前進していくためには保護者の皆様のお力も必要です。どうか、私共と一緒に頑張っていきましょう。本日はお忙しい中——』



まだ続くのか。何処の学校でも校長の話は長い。「これで最後になりますが」が何回もあるのだ。いつが最後だっつの!みたいな。内心うんざりしながらも、後ろではおばあちゃんが見ているので背筋をピンとのばしてみせた。

あー面倒くさい。ほんと面倒。入学式なんかなくても生きていけるってー。てか勉強なんて足し算引き算掛け算割り算できてたらいいんだよ。将来xとかyとか使わないから。絶対。それに今は電卓という便利な代物があるんだよ。おわかり?

…おっと話がずれちまった。いつのまにか校長の話は終わっていた。よしもうすこしで帰れるぞ!恭弥くんはもう完璧寝てるよ。私も寝ようかな。いいよね!だって未来の風紀委員なんだから((関係ない



「(おやすみー…)」



心の中で呟いて、瞼を閉じる。すべては暗闇に没した。





 ***




「——り、——由香里、」



由香里…?誰それ…。ああ、私の元の世界での名前だ。懐かしい。もう捨てた名前を呼ぶのは誰だ?忘れようと、もう捨てた名前を、誰が呼んでいるのだ?

目をうっすらと開けた。元の世界のお母さん、お父さん。弟。高校の友達。夢…?…私の、懐かしい世界。元の世界。ごめんね勝手に死んで。ケーキバイキングに行く途中に死ぬとかおかしいよね。あーあなんであのとき死んじゃったのかな。

てか何で今更、こんな夢見るんだろう。決心したのに。この世界で生きるのだと、決心したばかりだよ?もう、私、元の世界を捨てたのに。忘れようとしたのに。今更でてこないでよ、お母さんお父さん、弟。


ごめんね…ごめん。勝手に死んでごめん。本当、親不孝者だよ私。



「由香里……なんで、死んじゃったの…?」



泣かないで、お母さんお父さん。


私なんかのために涙はもったいないよ。それにね、ちがうの。
もう私、由香里じゃないんだ。千歳っていうんだ。あと、私の居場所は、ここなんだよ。元の世界じゃない、私の居場所は、並盛なんだ。

「浅井千歳」に〝ならなきゃいけない〟んじゃない。私は「浅井千歳」で〝いたい〟んだ。この世界で、いたいんだ。
だから捨てる。忘れる。お母さんお父さん、弟。高校の友達。

もう行って。どこかに行って。もう二度と、私の夢にでてこないで。
もう、消えて。ほら、決心が、鈍るでしょーが……。



「…そうよね、いつまでもクヨクヨしてちゃいけないわよね由香里…」



そうだよ、お母さん。じゃあね。さようなら。もう、会わないよ。




 ***




「……んん、…きょーや…くん?」



目を覚ますと、目の前に恭弥くんがいた。吃驚して思わず後退りしてしまう。あたりを見回すと、保健室らしき場所。どうしてここにいるんだ。何故。
そう思って、一応恭弥くんに聞いてみた。恭弥くんは「はあ?」というような顔をして溜息をついた。



「だって君、起きないからね。どっかの先生が保健室につれてきてくれたよ。ちなみに今は12時。もう皆帰ってる」
「はあ!?12時、ですか…、すみません。待っててくれたんですね…」
「本当、勘弁してよね。待っててあげたんだから、なんかおごってよ」
「恭弥くん、君…。小学生にモノねだりますかフツー」
「僕も小学生さ」



いや、そうですけどね。私はこめかみに指を添えて、やれやれと肩をすくめた。すると恭弥くんが「うなされてたけど。どうかしたの」と聞いてきた。うん、そうだなあ。夢は見たよ。けどね、もういいんだ。ふっきれちゃった。私はもうすでにここの世界の住人だからねー。いつまでもクヨクヨしてられないっていうか?だけどね、最後に。



「ちょっと由香里っていってみてくれない?」
「……?」



幼稚園のとき(正確には綱吉くんと出会ったとき)、由香里って名前は捨てたはずなのにな。どうしても、諦めきれないんだよ。
だからね、恭弥くんに言って欲しいんだ。ほんとにこれで最後にするからさ!だから、



「…由香里、?」
「………うん。ありがと」
「意味わかんないんだけど。何で泣いてるの。千歳。」



あれー由香里って名前捨てたとき、泣くのもやめたはずなのになー。ばっかみたいだ。できもしない誓いするんじゃないね、ほんと!

恭弥くんが、ぎこちなく私の涙をぬぐった。



ああ、ほんと馬っ鹿みたい。まじ死ね私。



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