二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 風の守護者とプリンと風紀、 / REBORN ( No.4 )
- 日時: 2012/05/05 20:07
- 名前: なゆ汰 ◆TJ9qoWuqvA (ID: w0.JbTZT)
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標的02 / 異端者の集い
5歳になった夏のある日。夕方、おつかいの帰りだった。カレーの材料を入れた買い物カゴを肩にかけて、並盛平和公園とかいう在り来たりな名前の公園の前を横切る。するとブランコに乗って、蹲っている男の子を発見。赤い夕日に照らされて、ぐずぐずと鼻を啜っていた。見覚えのある容姿だった。重力に逆らったような髪が一番特徴的だ。
私は、買い物カゴを肩にかけなおして、男の子に近づいた。
「どうしたんですか」
「!……べ、つになんでもな、いよ…っ、」
びくりと震えてあげられた顔はやはりREBORNの主人公だった。その顔は涙でぐしゃぐしゃに歪んでいる。私は今5歳だから、此の子は多分3歳とか4歳とかそこらへんだ。まだ若いのに苦労してるな、と次から次へと出てくる涙をぼんやり見つめた。
彼の肩は震えている。まるで3歳の頃、不安でいっぱいになって泣いていた自分そっくりだ。
「そこの少年、つよがらなくてもいいんだよ。」
「……え?お、れ?しょーねん、って…」
「そうだよ。きみはだめなんかじゃないから。」
彼が泣いている理由は聞かずとも何となくわかる。友達に「ダメツナ」といわれていじめられたのだろう。
私はうずくまる彼の目線に合わせてしゃがみこんだ。このときばかりは舌足らずで上手く言葉にできない幼い声を悔やむ。
だいじょうぶだよ、だいじょうぶだから
ないていいんだよ、わたししかみていないから
わたしみたいに、きみはくるしまなくていいんだよ
きみは、異端者じゃない。れっきとしたこのせかいのにんげんなんだから。
言いたいことはたくさんあっても舌足らずな言葉しか出てこない。
なんだか私まで泣きたくなった。
「…けどっ……っみんな、おれはだめなヤツだ、って…!」
「けっしてきみはだめなヤツではないよ」
「……ほん、と?」
「はい。だからだいじょうぶ。きみががんばっているのはわたしがしってる。きみのおかあさんがしってる。しってくれているひとはかならずどこかにいるから。だからじぶんを責めないで。いつかきっと、きみを慕ってくれる人が現れるよ。」
それは不確かな言葉だ。「だめなヤツではない」だなんてそんな不確かな言葉、気休めにもならないだろう。けれど馬鹿な私にはそれくらいしか言葉が見つからなかったから。だから、其の言葉を君にささげましょう。ごめんね、役に立てなくて。けれど今の私にはそれが精一杯の言葉なんだ。
見れば彼の瞳は、もうぬれていなかった。よかった。泣き止んだんだね。
けれど彼は、もっと悲しそうに顔を歪めて、私の顔を覗きこんだ。
「おねえさん、…かなしそうなカオしてる」
「……そう、かな」
「うん。どっかがいたそうな、カオしてる」
「いたそうな、カオ……」
彼は私を心配そうな顔で見つめてから、そのまま笑顔を作った。
そして私の服の裾を握ると、私の頬に唇を押し当てた。唇を離してから、照れくさそうな顔をして「いたいいたいの、とんでけー」って呟いた。
ずっきゅん、とその言葉に私のハートは射抜かれる。
かわいいすぐるよ。おかげで私は死にそうだよ。
私はぎこちなく微笑んで、彼の頭をなでた。
「きみのおかげで、もう痛くなくなったよ」
「ほんと!?よかったあ!…そうだ!おねえさんのなまえは?」
「わたし?わたしはね、千歳っていうの。」
「ちとせおねえちゃん!おれはね、さわだつなよしっていうの!」
「うん、よろしく、つなよしくん。もうおそいからおうちまでおくってあげるね。きみの家、どこか教えてくれる?」
つないだ手は、暖かい。
私も、前を向いていかなきゃならないんだな。主人公にあっちゃったんだもの。認めるしかない。否定しても、意味が無い。
ごめんね、綱吉くん。ちょっとだけ、泣いていいかな。
だいじょうぶ、痛いわけじゃないから。これが最後だから。
これからは、泣かないと誓うから。
「…ぅ…っく…」
「だいじょーぶ?ちとせおねえちゃん」
うん。だいじょうぶだよ。あ、家がみえてきたね。もうばいばいしようか。え?うん、きっとまた会えるよ。
またね、つなよしくん。
さようなら。さようなら。
元の世界に、さよならを告げるよ。
もう私はこの世界で生きなきゃならないから。
遠藤由香里じゃなくって、浅井千歳に、ならなきゃならないから。
ばいばい、もう泣くのはおわり。
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