二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【D.Gray-man】 —ゲームオーバー— ( No.21 )
日時: 2012/05/12 22:16
名前: ユーシェ (ID: DOGZrvXb)

〜3.寄生型イノセンス、亜種 〜 


「さて。これからリコル君には、僕と一緒にヘブラスカに会いに行ってもらうよ?」

黒の教団本部に帰ってきたリコル達。荷物などを片付け終わり、今、リコルとイロハが本部の支部長であるコムイに説明を受けている所だ。

「ヘブラスカ?…黒の教団って、変な奴たくさん居んなぁ…切り裂き偏執狂とか」
リコルの言葉に、イロハが黒いオーラを放ちながら反応する。
「誰のこと言ってんのか説明してくれない?別に怒ってないわよ?ただ、リコルを切り裂きたいのは事実だわ」
「ったく、昔と変わってねぇなー切り裂き魔」
「そっちこそ、相変わらず口悪いわね。憎まれ口」

「あのー…2人共?ちょっとー?」

—まるでアレン君と神田君みたいだなぁ…—

コムイがそう思いながら2人を交互に見て、声をかける。すると2人が同時に振り返り、「あぁ」と、今コムイの存在を思い出したかのように呟いた。




数人は乗れるかと思われるエレベーター。そこに立っているのは、コムイとイロハとリコルの3人だ。

「この下にヘブラスカが居る。ヘブラスカには、イノセンスが何型かとか、シンクロ率とか…色々調べてもらうんだよ」

コムイが簡潔に説明した。

「ついでに私のイノセンスは装備型!シンクロ率はなんだったかなー…あぁそうそう、76パーセントぐらいだった」
「へぇー凄いじゃねぇかー76パーセントねぇー……ダサッ」
「何がダサいよ!!どうせあんたなんて10パーセントにも満たないんじゃないの!?」

イロハがたて続けに何かを言おうとした時、エレベーターが暗闇の中で止まった。どうやらついたようだ。

コムイを先頭にエレベーターから降りると、目の前には薄水色で半透明な生き物…ヘブラスカがそこには居た。優しげな表情を浮かべている。

「そこに居る子が、新たなエクソシストか」
ヘブラスカが透き通るような声で、コムイに訊ねた。
「あぁそうだ。頼む、ヘブラスカ」
「分かった」

ヘブラスカが承諾すると、リコルの方に向き直った。

「じっとしていろ」
「んなの百の承知に決まってんじゃねぇか」
リコルがそう答えると、早速、リコルのイノセンスについて調べ始める。

「それにしても驚いた。普通ならば、私の姿を見てまずは驚くと思ったのだが…最初から今まで仏頂面とはな」
「仏頂面が、俺の普段の表情なんだよ。それに、別にうわぁって驚くことでもねぇし」
「それが不思議だと言っているんだ」

くだらない会話をかわしていると、突如ヘブラスカの顔がいっぺんした。まるでいけない事を知ってしまったような…

「何があった?」

コムイが怪訝そうな表情をしながら訊く。
ヘブラスカは数秒硬直した後、ゆっくりと口を開いた。


「イノセンスのシンクロ率が、21パーセントしかない…」


「は??」

リコルが、あまりの数値に眉を顰めて呟いた。イロハも驚いた様子で、頭に疑問符が浮かんでいた。嫌な予感が、全員の頭をよぎる。

「シンクロ率が21パーセント…危ないぞ」

ヘブラスカが深刻な表情で告げる。


「イノセンスのシンクロ率は高ければ高いほど、勿論良い。
だけど、そのシンクロ率が0になると咎落ちって言って、体がイノセンスに取り込まれて、強大なエネルギーを放出して破壊行為を繰り返し…最後には“死ぬ”」


コムイが口にした“死ぬ”という言葉は、とてつもなく重かった。だが、リコルの仏頂面に機微の変わりもない。
イロハが思わず、叫ぶような形でリコルに言った。

「リコル…なんでそんなに普通な表情でいれるの!?話聞いてる!?」

誰もが思うようなことだった。
リコルはいたって静かな態度で言葉をはきだした。

「だから、驚くことでもねぇっつってんだよ。シンクロ率が低かろうが、0になって咎落ちになろうが…事実なんだからしかたねぇ。
それ意外、怖いとか心配とか、何を感じるっつーんだよ?」
「信じられない…少しは心配しないの!?私だったら……怖い」
「おいおい、お前、とうとう頭おかしくなったのか?いや、前からか。
俺が死んだら死んだで、埋葬されるっつー話だ——」

リコルが喋っていたその時、イロハの右手の平がリコルの頬を思いっきり叩いた。その部分が少し赤くなる。
コムイは黙ったまま息を呑み、ヘブラスカはただ無言で様子を見守っているだけだった。

「そっちの方が頭おかしいんじゃないの!?何が埋葬よ。ふざけないで…
自分の身ぐらいちゃんと心配して守ろうとしなさいよ!!
昔から本当に変わらない………そういう所があるから、私はずっと昔からリコルが大嫌いだったの。大嫌いなの!!!」

イロハが頭に血を上らせながら、言葉をはきつづける。

「いつも1人って感じで、俺はどうなってもいいみたいなさ…このさい、はっきり言うから。


“最悪”」


最後にそう言うと、泣き泣き逃げるようにしてエレベーターに乗り、1人、上にあがって行ってしまった。