二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

あまりにも一方通行な、 ( No.4 )
日時: 2012/05/23 19:47
名前:  みもり、 ◆Oq2hcdcEh6 (ID: i4kjv3jU)




 彩音、俺さ、!



 嬉しそうな利央の顔に、目頭がじんわりと熱くなった。

「——よかっ、たね、」

 嗚呼、あたしは知っていた。
 利央が亜美のことを好きだってことも、亜美がみんなに愛されてるってことも、——全部、知ってた。
 あたしは利央が好きで、だから桐青に行こうとして、でも、利央が亜美を追いかけてるって知った時、あたしは酷く気分が悪くなって、結局適当な高校を選んだ。
 小学生の時から、利央はあたしの隣に居た。
 それが普通で、あたしは漫画の中のヒロインみたいに、当たり前のように隣に居た利央に恋をしてて、それで。
 ——だけどあたしは、知ってしまったんだ。

「りお、う?」

 亜美を追いかけている利央の視線が、表情が。
 キラキラとしていることに。あたしに向ける笑顔より、亜美に向ける笑顔が。とっても素敵で、綺麗で、格好良いことに、あたしは気づいてしまった。
 亜美を憎いと思った。
 亜美を狡いと思った。
 ——————だけど、あたしが最低で仕方なかった。
 自分の気持ちを言えず、こうやって人ばっかりを憎んだりして、あたしは最低だと、そう思った。亜美が友達じゃなかったら良かった。そしたらきっと、あたしは亜美をずっとずっと憎んでいられただろう。
 同じ中学で、同じ立ち位置。
 あたしのほうが、利央に近かったのに。あたしの方が、利央の隣に居た時間が長かったのに。あたしのほうが、あたしのほうが。

「——え?」

 だけどやっぱり、運命なんて変なものだよね。
 亜美が利央を好きになれば、あたしはそれはそれで諦められたのかもしれない。笑顔で応援できたのかもしれない。
 なのに亜美は、高校生になって、亜美の視線は、誰に向けられた?

「 島崎先輩 ! 」

 嗚呼、どうして上手くいかないんだろうね。





せめてあなたが彼を好きなら。
   ( きっとあたしはこんなにも苦しまなかったんでしょうか ? )







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