二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: NARUTO-夜光伝 ( No.4 )
- 日時: 2013/08/10 15:04
- 名前: 銀春 (ID: VJEgN8CS)
【預かる者 預かられる者】
何故か‥しばし…気まずい沈黙が流れた。
初めに沈黙を破ったのは、ハルだった。
ハルは、ゆっくりと立ち上がり声のした方へと目をやりながらクナイを手に持った。
「…誰?‥」
行き成り狐は、ククククッと笑い出しハルの目の前まで歩み寄ると少し呆れた目でハルを見上げた。
「誰と申されてものぉ~呼び出したのは、紛れもない主じゃろうが」
狐の姿を見てハルは、驚いた。
さっきは、陰に隠れ 形と大きさが     、何となく確認出来る程度だったが、歩み寄って来た狐は、銀灰色のいわゆる銀狐
確か 毛皮は、高級品だった気がする。
だが、それよりも目を引かれたのは、鮮やかな赤色の稲荷狐のような柄だった。
狐は、やれやれと言いゴボンと咳払いをし、その場で 今度は、さっきのと違い深々と頭を下げ 再度 挨拶をした。
「我が名は、クレハ 代々この内葉一族に仕うる口寄せ獣の一つで我々は、この内葉一族の歴史と秘密を先代より守っている‥まぁ〜ざっくり言うと、門番とでも言うかのぅ〜」
「…‥えっ!…あっはぁ‥わ私は、内葉 ハル…(‥口寄せ獣?‥一族の歴史?‥…秘密?…‥)」
外見は、落ち着きを装っているが、完全に目が泳いでいる。
「(やれやれ…やはり、まだまだ子供じゃな   完全に心の内がバレバレじゃわい)ふむ‥混乱してるようじゃのぅ~‥まぁ、いきなり全て理解せよと言うのも無理な話…じゃしな」
ハルを見たままクレハは、少しバカにした様に笑った。
それを見ていたハルは、軽く深呼吸をすると同時に肩の力を抜きゆっくり目を閉じと考え始めた。
しばらくしてハルは、目をゆっくり開け目の前にいるクレハを見据えぼそっと…分かった‥と言い部屋にある障子へと向かった。
「…へっ?(何が‥分かったと?)」
余りにも予想外の答えにクレハは、思わずマヌケな声を出していた。
だが、ハルは まるで聞こえていない かの様に無言で障子の戸を片方だけ開けた。戸を開けると同時にスゥーと冬の面影の残る初春の冷たい外気が身体を包みこむ。
辺りは、日がとっくに暮れ薄暗く
空は、淡いオレンジから藍色へと移り変わり
やがて、深い濃藍へと落ちて行った。
「‥今日は 朧月か…」
ポツリと空を見上げ呟く
月明りに照らされ 白銀色の髪がより光を増し
夜風に吹かれショートヘアがキラキラとなびく。
その姿は、とても妖美でいて…とても淋しく見えた。
と、行き成り
「なぁ‥クレハって元々 父の口寄せ獣だったん だよな」
空を見上げたまま言うハルに 何じゃ突然?と若干 顔をしかめながらもクレハは、答えた。
「勿論、その通りじゃ。わしら は、代々 族長の家系に仕えておる。無論、主も例外では、あらぬぞ」
「じゃぁ…私の父ってどんな人だった?」
「(なんじゃ?…行き成り…まぁ、良いか‥)そうじゃな〜教えてやってもよいんじゃが、それには、一つ条件がある」
「‥条…件?」
「うむ、条件じゃ」
「……?」
ハルの頭上にクエスチョンマークが見えた気がした。
「なぁ~に、簡単な事じゃよ わしが一族の事を教える代わりに主にわしの命を預けたいんじゃ」
「・・・・いっいの・・預けるって、はあああああああぁぁぁ!!!!!ざけんなっ!!!!」
叫ぶと同時に後ろへ少し仰け反ったまま、ハルは、その場で硬直してしまった。
クレハは、悪戯じみた笑みを浮かべながら続ける。
「何じゃ、不満か?」
「だっ‥何でお前の命を預んなきゃいけねぇんだよ!!!!だって私は‥」
急に 口ごもり拳を握る手に自然と力が入る。
「‥無いんだ……」
「何がじゃ?」
「私は、お前の命を預かる……資格なんて無い!」
「ほぉ〜無いか…それは、主が弱いから守りきれぬ と、」
その言葉にハルは、ビクッと体を震わし クレハから目を逸らし無言で頷く。手元を見ると握っている拳が震える。
それが、自分への怒りからなのか またしも、あの日に植え付けられた恐怖からなのか は、分からない。
が、クレハは 構わず続ける。
「主は、どうしたいんじゃ? また、逃げるのか? また、現実から目を瞑り周りにビクつきながら生きるのか?どうなんじゃ!ハルよ!!」
行き成り声を荒げたクレハに驚き顔を上げた。
クレハは、何も言わず見つめる。
ただ まっすぐハルを見つめるその瞳には、何故か凛とした優しさのような ものを感じた。
とその時、突然、突き刺す頭痛と共に何処かで聞いた事のある 声が頭の中で何かを囁いてくる。誰かは、分からない。でも、その声は 頭に響く様に確かに聞こえる。
”消せ 消せ 消せ 消せ 消せ 消せ 消せ 消せ 消せ 消せ 消せ” と頭の中で 木霊す様に
何度も 何度も
同じ単語が 繰り返し 繰り返し‥聞こえる。
前にも、こういう事は、あったが精々 痛みで視界がぼやける程度で何とか我慢できていた。
だが、 今回のは 違った。
頭痛と共に禍々しい何かが、自分の中に入って来る感覚。
「……‥まれ」
グラリと視界が回り そのまま しゃがみ込み 耳を塞ぐ様に頭を抱え込み何かを呟いている。
「?(何じゃ?)」
「…‥れ…‥黙れ!黙れ!黙れ!!!」
「?(何が起こっておるのじゃ?)」
クレハがあれこれ思考を巡らせていると
何時の間にか辺りがシーンと静まり返り 荒い息使いだけが聞こえた。
「…はぁ…はぁっ‥はぁ…はぁっ…はぁ(‥チッ…何だよ、こんな時に・・・何だってんだよ)」
頭を抑えフラフラと立ち上がり"大丈夫だ"とクレハに無理やり笑ってみせた。
「‥‥悪い…話の腰‥折っちゃったな…えぇっと、確か …」
「おおっおいっ!あまり動くで無い!!一先ず座れ!話は、それからじゃ!」
あぁ‥分かったと言いながらその場に座り再びクレハを見つる。
「で?何じゃ?」
「まず、私は お前を……信用してもいいのか?」
「信ずるも、信じぬも 主の自由にせぇ 初対面で行き成りで変かもしれんが わしは、主を信ずるし わしらは、主のお父上から主のことは、色々聴いておるからのぉ」
「‥分かった、じゃぁ 最後にもう1つ」
「何じゃ?」
「何故 一族について話す代わりに何故 お前の命を預んなきゃいけないのか もし、私がお前の命を預かるのなら お前に私の命を預ける」
そう聞くとクレハは、ニッと笑った。
「ククッ‥エグいのぉまったく…(1つでは無く 2つでは、無いか…じゃが、気に入ったぞ 流石かのぉ 鳩が烏を産んだか…)」
「当たり前だろ、私だけに背負わせんな!これで、フィフティ フィフティだからな!」
と言いながらハルは、ニッと笑う。
「やれやれ‥今回は、わしの負けじゃ(こりゃぁ…烏では無く、狐か?)」
クレハがククッと苦笑していると、ハルが何か言いたげな視線に気付き ハルの方へ向き直った。
「で?」
「?…で?、何じゃ?」
「だ~か~ら〜一族の話しっ!!」
「うむ、その話しは、明日じゃ!今晩は、はよ 寝ろ!」
そう言いクレハは、フゥーと息を吐くと
スノーダストの様なキラキラとした光が飛び散り、辺りを包み込んだ。
「えっ、ちょっまっ……」
辺りが、次第に ぼやけ始め 次に、物凄い眠気が襲った。フラッと傾き床にぶつかる寸前てクレハが下に回り込み回避した。
そして、そっと床に寝かせ頭を撫でた。
「‥おやすみ、一族の遺産よ」
そう言うとクレハは、狐の姿から人の姿に変化し 羽織っていた着物をそっとハルに被せた。