二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 第01回SS大会 ( inzm ) 投稿期間5/19〜6/2 ( No.6 )
日時: 2012/05/20 12:22
名前: 海穹 (ID: fQORg6cj)
参照: 投稿させていただきます!



「その言葉に満たされる」









「秋ってさ、好きな人いるの?」

円堂の口から零れたのはもの凄い威力を持った爆弾だった。

教室に二人っきり、という恋愛マンガのような状況でしっかりこちらを見てのこの発言はまずくないだろうか、と秋は考える。
そして、何でこんなことになったんだっけ、とも考える。

そもそも、こうなったのは今週と来週が受験生にとって重要な重要な週であるからで。





       * * *





「なあ、秋」

「なあに?分からないところでもあるの?」

秋はそう言って円堂の机に広げられた数式を見た。展開の途中で止まっているそれは絶賛テスト期間中の円堂たちの中間テストの範囲に入っている問題だ。円堂はサッカー馬鹿で、まあ言うまでもなくサッカーに打ち込み過ぎているせいで成績は中の下。その上今回は内申にかなり関わる大事なテストなので秋に付きっきりで数学を教えてもらっているのである。


その結果、今二人は教室に二人っきりという状況が出来上がっているのである。




「ちょっと休憩!いいだろ?聞いてほしい話があるんだ」

背筋を伸ばしながら円堂はそう言う、秋は仕方ないなと言うふうに椅子の背に凭れかかった。聞いてほしい話なんてサッカーの話なんだろうなあ、と思いながら。


そして、話を聞いた結果、そんな爆弾発言が飛び出したのである。




教室中にも、外にも生徒の姿は見えない。鳥の囀りさえ聞こえない静かな放課後。
爆弾発言をした後、円堂は沈黙を保っていた。
秋が何か言うまでアクションを起こすつもりはないらしい。




「え、っと……それは、あの……」

「恋愛対象って言う意味で」

しどろもどろになっている秋とは対照的に、円堂は至極真面目に、こちらを見ながらそう返す。真剣な眼差しに、あぁ、でも逃げ場はないのだな、と秋は覚悟をした。



秋に好きな人はいる。太陽のような笑顔を持った、サッカー馬鹿、円堂守だ。
いつからか、と聞かれれば、はっきりとは分からないが一年の頃、サッカー部を二人で作った頃が一番当てはまる気がする。二人で頑張っていて、そんな頑張る姿と真っ直ぐな目を見て、惹かれて。それを恋だと自覚したのはもう少し後だった気がする。

でも、ちゃんと隠せているとは思っている。何せ円堂は鈍感だから。



「……いる、よ」

恥ずかしくなって少し顔をそらしながらそう答える。すると、そうか、と素気ない返事が返ってきた。質問しておいて、と思うがその顔に悲しみが滲んでいる気がしてその思いは消え去っていった。



「円堂君?どうかしたの?」

「ん、いや、ちょっとさ」

彼にしては歯切れの悪い返事。これは何かあったのだな、と直感的に思った。


「なに?好きな人でもできたの?」

聞き返してやれば、うっ、と分かりやすい反応が返ってきた。突き止めるべきか迷って、やめておいた。凄く気になるけれど、なんだかこれ以上聞くのはいくらなんでも酷な気がして。



「……秋」

円堂は急に凛々しい声を出し、秋を見据えた。
真っすぐなその目は秋が好きな彼らしい目で。引き込まれるようにその瞳を見ていた。




「お、俺——————




                       秋が好きだ!!」





大音量のその声は少し教室の中で木霊した。
そして、あまりの唐突な告白に秋はその言葉の意味を把握するのに数拍の時間を要した。


「……え?」

我ながら間抜けな声が出たと思う。でも、これは仕方ないのではないだろうか。好きな人に、唐突に、二人っきりの教室で、大声で、告白されたのだから。

今までの話は確かに色恋沙汰の話ではあったが、なんで唐突に告白に移るのだろうか。そう言う一直線なところが彼らしい気もするが。


「あ、ごめん、急に……吃驚したよな、うん、ごめん」

さっきまでの勢いは何処に行ったのか、円堂はあたふたして何か言っている。

あんな爆弾を落とした後では今更な気もするのだが。





「返事、していい?」

そうしなければいけないと思った。一方的に思いを受け取るだけでは円堂が可哀想だし、自分の思いも知ってもらいたかった。だから。
うん、と円堂がこちらを少し居た堪れなさそうに見たのを確認してから、言葉を紡ぐ。


「私は———、円堂君が好きです!」

彼と同じように少し元気よく、言って見せた。

すると、



「…え?……え??」

円堂は目を丸くしながら、秋をしっかりと見る。真っすぐな、秋の大好きな目がそこにはあった。まあ、少し驚愕に染まっているから、本当に真っすぐではない気もする。



「ホントか!?」

「ホントだよ!ふざけてこんな恥ずかしいこと言うわけないでしょ!」

ちょっとやけになりがならそう言えば、顔がみるみる内に嬉しさに染まっていくのが見える。反対にこちらは恥ずかしくて顔が熱くなっていくのが分かった。耳まで熱くなっている。



「秋!!」

「きゃぁっ!」

机越しに抱きしめられて悲鳴じみた声が上げてしまった。
何が起こったのか把握できなくて数回瞬きをして、何とか状況を把握した。なんとも唐突な抱擁だが、顔が見られないのは嬉しい。こんな真っ赤な顔見られたくないから。


「大好きだ!秋!」

「……わ、私だって……!!」

なんだか凄く恥ずかしい言い合いをしている気がする。でも、いい気がした。







       ——心が満たされている気がしたから。彼の、言葉に。










—————————————————————————————


中三の円秋でした。何だこれ。



もうお目汚し申し訳ありません。

私のスレで切ないやつ書いたからこれは甘くしてみました。
対照的になる様に書いてたら大変なことになってた……

でもすごく楽しかったですww