二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【inzm】 VIINの会 【voc@loid】 ( No.33 )
日時: 2012/05/28 19:27
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
参照: http://www.youtube.com/watch?v=oeZDY9ltFBU


 この場所には何もない。あいつと触れあった、あの暖かい感触でさえ、なくしてしまっている。すぐに戻ってくるって、わかってる。けど。
 ずっと一緒に居たのに、いきなり遠くに行ってしまったからか。いつの間にかに芽生えた、悲しみを残しているだけで、他には何もここにはない。
 今感じてる風の色も、緑の音も、私には掴めない。今日のことを、お前に話しかけることができない。一度掴んだものは、隙間から逃げていくだけで。本当に、いつの間にかに。悲しみ以外を、なくしていた。
 お前が電話越しに居ることはわかっているのに。今は顔を見せれない場所に居ることは、分かってるのに。


 楽しそうにわらう、声。ああうん。そうだな。適当な相槌をしながら私はあいつのことを考える。
 そんなことどうでもいい。優しい声で呼んでくれたらそれでいい。いつもの調子で私の名前を呼んでくれないと、あいつの中から私が消えてしまいそうな気がして、こわい。
 それでも、臆病な私は何一つ言えやしない。
 画面越しに伝わる声。私の声を呼んで、向こうで想って、微笑んで。

 ——たった、それだけの言葉。

 2歩先に進んで、そこから眺めた、夢にまどろむ顔。ふたりで、少し照れて、遠い場所から微笑むような。そんな妄想をしていた。
 そして口に出そうと、つっかかって咽ぶ。3歩目が、いつまでも踏み出せない。あと1歩なのに、嫌な未来が邪魔をする。そんなもどかしさを憎んだ。自分の勇気のなさを憎むべきなのに。
 
「大丈夫?」

 ときに、心配そうに声をかけるあいつの声。その僅かに差す光さえも、私には掴めない。あの未来がいつまでも頭にこびりついて、手を出すのをやめてしまう。
 
 ひとりぼっちだ。暗闇の自室は、まるで私の心を表したみたいだ。ごちゃごちゃと散らかった部屋。潔癖症のお前がいないと、この部屋は片付けられない。静寂を引き裂くように、私はひっそりと、か細い声で歌を歌う。
 
 ————いつかお前が好きだと言った、懐かしい歌。

「私を、私の名前を」

 止まりきった過去を想う。彼が私の名前を呼んだ過去を想う。現在の時が狂う。無意識に涙がぽろぽろと、ベッドのシーツに染み込む。
 
「何もかも、捨てて、こっちを向いて……」

——明るい場所で、歌わせて。
 

 それでも私はわかってる。
 あいつが今、頑張ってることを捨てることはできない。あいつが今、向き合うべきなのはサッカーだと言うこと。そしてあいつが戻ってきたら、私は彼と一緒に明るい場所でわらい、歌えることを。
 そう考えると、自分が凄く自分勝手なことを願っているみたいで、自己嫌悪に陥る。
 それでも私は、あいつに名前を呼んでもらいたい。今すぐに、私の存在を証明してほしい。
 

「——玲名」


やさしい、こえで。
 涙を流しながら微笑んだ。


 ————あなたも一緒に微笑んで。


「…………ヒロト」

 
@  sleeping beauty

[ sleeping beauty ]
作詞・作曲:164  歌:初音ミク
 
ヒロ玲/無印3期途中/でれっでれ

最初は円秋で悲恋かなーとか思ってたけどこの玲名ちゃん想像したらやっべまじ可愛い動悸やべぇみたいだったんで。
かなり読みにくい&歌詞の意味ちょっと違う気がしますがご愛嬌。

ネガティブで一途な玲名ちゃん、素敵!