二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【inzm】 VIINの会 【voc@loid】 ( No.49 )
日時: 2012/06/23 19:12
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
参照: 見えない煙を吐いている │ え、展開おかしいって?

 気が付くと、朝になっていた。周りを見回して、何も変わっていない現実が嫌になる。
 今までのことが全て夢で、俺は妹と施設で育った普通の中学二年生だったならば。俺はこんなに窮屈じゃなかったんだろうか。
 そんな事を考えながら、いつも通りに朝を過ごし、いつも通りに学校へ向かう。授業して、疲弊して、またサッカー。
 ふと溜息を吐き出すと、総帥が名前を呼んだ。

「鬼道」
「……はい」

 名前を呼ばれたら、元気よく返事して、前に出てきなさいだったか。小学生の頃、何度もうるさく言われてきた言葉。元気なんて、出そうと思って出るものじゃあないが。
 総帥が歩き出した。また、何か言われるのか。普通なものが、どんどん崩れていく。持っていたものが崩されていく。

 暗い、部屋。まるで総帥の心でもそっくりそのまま写したかのような、とても黒い部屋。底のない悪意で満ちている。落ち着かない。
 総帥が、口を開く。不敵な笑みを浮かべる。何も耳に入ってこない。何を言ってるんだろう。正解か? 勝利か? 善悪か? なんでもいい。正解ならば知っている。円堂守そのものが正解だ。勝利ならば知っている。正解はしてないが。善悪といわれれば、俺はそのどちらでもない。強いていうなら、きっと卑怯者だ。
 手を使ってでも、勝利する卑怯者。サッカー、なはずだが。
 
「どんな手を使ってでも、勝利しろ」
「……はい」

 イエスオアノー? その言葉に、質問なんてぶつけられるものか。質問などない。特になければ、以上で話は終わる。沈黙の中、俺の靴の音だけ響いた。話を終えて、俺は外に出る。不気味な総帥の笑みと、純粋なアイツの笑みが、頭の中に浮かんだ。

「はあ」

気まずい空気から抜け出して、溜息を吐き出した。言葉にならずに溜まって、澱んだ思い。ああまた、見えない煙を吐いているみたいだ。
 馬鹿なら良かったよ。きっと円堂守みたいにまっすぐだったら、俺はここまで卑怯者じゃあなかった。曖昧な場所で、浮かんでいる。
 言葉にならない思い。意味などないもの。

 例えばアイツが今の俺みたいに悩んで、憎んで、俺自体を煙たがられても。アイツと笑っている未来を想像するだけで、俺は卑怯であることを選ぶ。
 
 ふと、考える。
 万一卑怯を貫いたとして。——そういう俺が、アイツの隣で笑っていいのか?
 今までみたいに、仲良しじゃないだろう。これが最善なんて誰が思ったんだ。

「お前と一緒に居られない」

存在自体も煙みたいだ。

「——春奈」 


@ 見えない煙を吐いている

[ 見えない煙を吐いている ]

作詞・作曲 : すんzりヴぇrP
歌 : 鏡音リン・レン

鬼道視点/ネガティブ/フットボールフロンティア辺り

本編をちょっと改造して絶望した鬼道さん
結構歌詞の部分無視したり意味わからんかったりだけど、
まあそれはそれでいいのだ。