二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【ポケ】旅立ちの日【BW】 ( No.2 )
- 日時: 2012/06/09 17:17
- 名前: 桜咲 紅葉 (ID: uwZWw1uD)
- 参照: 私には有り得ないセリフの少なさ。医者っぽい部分あるけど気にしない
第1章:雨ノ日ノ出会イ
目が覚めると外は一面雨だった。
窓の外はどこを見ても雨で、この世界が水だけの世界になったようだった。そう思っても良いほど雨はきつく、そしてたくさん降っていたのだ。今日はせっかくの旅路の始まりの日だと言うのに、なぜこんなにも大雨なのだろうか。
いつもはここ、カノコタウンは雨はあまり降らない。だが何故か今日、有り得ないと言いたくなるほどの大粒の雨が降っている。
こういう日は何かが起こる。今までの勘と知恵がそう言っている。だが自分は旅にでなければいけない。何故なら、幼馴染の二人と約束をしたからだ。
彼らは自分より早く旅に出ていて、すでに一つ目のバッジをゲットしているらしい。自分も旅にでるのがずっと楽しみだった。だが生憎、今日は大雨だ。やはり旅に出れなさそうだ。
でも、出たいんだ。
一刻も早く彼らに追いついて、共に旅をしたい。そう思いながらショウは窓の外を眺めていた。その時、急に腹の虫がなった。
そう言えば、まだ朝の5時だった。
起きたのは今から一時間ほど前、起きてからずっと窓の外を眺めていた。母さんや姉さんを起こすのも悪いし、ちょっと買いに行ってこよう。そう思い、愛用のバッグに財布とタオルを入れて、外に出た。
そう言えば、今の時間はどこの店も開いていなかった。仕方なく彼は家に戻ろうとしたが、良い場所があるのを思い出した。その場所に向かい、歩いていた。
歩いていて、不思議に思う事がある。
いつもならこの時間帯でも人が数人はいるのに、今は誰一人いない。もしかしたら自分は一人だけ別世界に迷ってしまったのでは…そう考えてしまうほど、雨の日はとても憂鬱だった。
その時突然、自分の腕に付けていたライブキャスターがなった。まだ買って貰ったばかりで、やり方がわからない。どうすればいいのか考えているうちに、電話は切れてしまった。
少し、雨宿りでもして、確認しよう
そう考え、近くの建物の屋根の下へ向かった
電話は間違い電話だった。見知らぬ人が出ていて、相手が間違えた事に気付いてくれたらしい。
それにしても、雨は先ほどより強くなっている。母さんや姉さんを起こして作って貰った方が良かったのでは…そう思い、傘を差して家に戻ろうとする。だがそう簡単には帰れなかった。
雨が四方から降り、風は強くなり、しまいには傘が壊れそうにもなった。だがあと少しで家だ。頑張れば食事にありつける。そう前向きに考え、家に向かって歩いた。
家まであと百メートルほど。やっと帰れる。
だが、道端に行きしなには無かった物があった。黒くて大きな物、自分より少し小さい。近づくにつれ、それは少女だとわかった。
「だ、大丈夫ですか!」
少女を抱きかかえ、声をかけても返事はない。脈を計ると正常だ。生きてはいる。
よく見ると、半袖の黒いワンピースだ。こんな大雨の中、半袖を着る人なんていない。しかも、傘を差していた様には見えない。実際、傘は辺りに見当たらなかった。
「しっかり!」
「…ぅ…」
気がついたようだ。ゆっくり少女は目を開けた。
「大丈夫?」
「は…い」
よく見ると少女の瞳はとても綺麗な赤色だった。だが自分はその目を怖いと感じた。感情の無さそうな目だが、心の奥底に怒りと悲しみが混ざり合っている様に見えたからだ。もちろん実際は違った
「キミはどこから?」
「わか…ら…ない」
わからない?どうして…
その言葉を聞いて自分は少し戸惑った。こんな時間に、しかもこんな天気の日に、どこから来たのかわからないなんておかしい。だが一つだけわからない理由がわかったような気がする。
記憶喪失…
記憶喪失とは、過去や自分の周りの記憶を思い出せないことだ。原因は、脳への外傷や精神的ショック、極度のストレスやトラウマにぶつかった時など。
耐える事の出来ない心理的な事から、受け入れがたい情報や感情を、意識的な思考から切り離す、で発症する場合もある。
きっと彼女はそのどちらかだろう。
「怪我は?」
「してない…と思う」
雨が降っていた事を忘れていた。自分の傘は先ほど放り投げてしまい、壊れてしまった。
「と、とにかくどこか屋根のある所に…!キミも!」
「うん…」
二人は近くにあった屋根の下に向かった。
「はい、タオル」
バッグから取り出したタオルを少女に渡す。
「…」
「あ、ほら、濡れてるから」
「ありがと…」
彼女は本当に記憶喪失なのだろうか。確かめるため、少し質問を考える。
「ねぇ」
彼女が話しかけてきた。
「どうしたの?」
「名前…」
そう言えば名前を言っていなかった。でも彼女の名前、知らないし…見ず知らずの人に名前って答えて良いのだろうか…
「えと…僕はショウ。よろしく。」
「私…ハヅキ…」
その名前を言うと、彼女は静かに倒れた。その時自分は倒れた事に動揺して忘れてしまったが、彼女の名前を聞いた時、何か懐かしい感じがした。
それは雨の日の出会いだった。