二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第十話 ( No.18 )
- 日時: 2012/06/19 19:59
- 名前: 時橋 翔也 (ID: NihAc8QE)
「…神童にはさ、未来っていう双子の妹がいたんだ」
霧野は話し始めた
「今から三年前かな…俺たちは稲妻第二小の五年生だった、…俺と神童は幼稚園から一緒で、その中には当たり前のように未来がいた」
遊びに行くときも、学校に行くときも、勉強するときも、ほとんど未来は一緒にいた
「…ある日、都市の方でプロサッカーの試合があって、それを観るために俺と神童と未来は都市に行った、俺たちはその時、コトモノ何て聞いたこともなかったよ」
サッカー観戦が終わり、帰りの電車に乗っていた時だった
「…帰りの電車で、トレインジャックがあったんだ」
そうして電車に乗っていた客たちは人質となった
犯人たちは皆コトモノだった
「目的は、刑務所にいる仲間の解放だった、やつらは戦闘が得意なコトモノじゃなかったから、片手には銃を持っていた、…そしてやつらは威嚇のために銃で空気を撃った…つもりだったんだろうな、その流れ弾は、未来の腹に命中したんだ」
動かない未来
赤く染まる床
泣きながら未来を呼ぶ神童
まるで、悪夢を見ているようだった
「そのあと警察が来て…犯人たちは逮捕されたけど…未来は搬送先の病院で間もなく死んだ」
そのときの神童の顔は今でも覚えている
霧野自信も信じられなかった
未来が死んだ
いつも当たり前のようにそばにいた未来が、
突然居なくなってしまった
その日から、神童は笑わなくなった
霧野と一緒にサッカーをしても
好きな音楽を聴いても
二人で帰っても
「…それが松風が来てからまた笑うようになったんだ、剣城なら覚えているだろ?松風が来る前の神童」
「ああ…」
確かに笑うところを見たことがなかったな、と剣城は心の中で思う
「…でも、俺がコトモノだから」
俺がコトモノだから、キャプテンを傷つけてしまった
「俺は松風を責めている訳じゃない…ただあいつは、天馬や監督が、自分の妹を殺したコトモノを持っているんだと知ってショックだったんだと思う」
「………」
「…そういえば監督は?」
剣城は辺りを見て言った
「…守兄さんなら、さっき出ていったよ」
ロゴは言った
もしかして、キャプテンのところに?
天馬はそう思った
——————
神童はホテルの屋上にいた 九階にある屋上は眺めがよく、風が気持ちよかった
「…………」
屋上の柵にもたれ掛かり、景色を見ながら神童は考え事をする
天馬が…コトモノ…
ショックじゃないと言えば嘘になる
けど、この気持ちは何だろう
『お兄ちゃん』
未来を殺したのはコトモノ、そのコトモノが、天馬と監督
あの日、未来が死んだ日を神童は忘れた事はない
光を失っていく瞳
どんどん冷たくなる未来の身体
真っ赤に染まる自分の手
『未来!!未来っ!!』
どんなに呼んでも、結局未来が戻ってくることはなかった
未来が死んでから、自分の心に穴が空いたようだった
何をしても、笑える日なんてなかった
それが天馬が来てから変わった、心の穴が埋まっていく気がした
なのに……
天馬はコトモノ……
「考え事か?神童」
声がして振り返ると、そこには円堂が立っていた
「…霧野から俺のこと聞いたんですか?」
「まあな」
円堂は神童の隣に来た
「…監督は、いつからコトモノなんですか?」
「小学校に入学する前からかな、どうして俺がコトモノを宿しているのかはもう覚えていないけど」
円堂は言った
「俺がコトモノだっていうことは、親と親友の風丸位しか知らなかった、怖かったんだよ、その頃はコトモノへのいじめが流行っていた時期だったし、コトモノだってバレて一人になるのがさ」
「………」
「だから、みんなとのサッカーを楽しみながら、バレたらどうしようってびくびくしてた、高校も、あえてみんなとは違う、都市の方の高校に行った、…サッカーが強いってのが一番だけど、高校でコトモノだってバレるのが嫌だった」
「『治療』しようとは思わなかったんですか?」
神童は訪ねる
「…ないよ、どんなことがあっても、コトモノを殺そうとは思わなかった」
円堂は言った
「…コトモノを恨むなとは言わない、でも全てのコトモノが、お前の妹を殺したようなやつじゃないってわかってほしい」
「………」
未来……
俺は…どうしたらいい?