二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 黒子のバスケ〜天才少女〜 ( No.127 )
- 日時: 2012/07/18 19:26
- 名前: ハルはる (ID: /2F25v/O)
第13Q 『優しさ』
シュートが入らない。
パスも、スティールもミスが目立つ。
「白崎!何やってんだっ、全中近いんだぞ!?」
「すいません、監督」
皆が驚いている。
練習に身が入らない。
「征十郎、ちょっと外周行ってくる」
「は!?お前、いま外雨だぞ?」
「大丈夫」
台風が近づいてきて、外はこれでもかって位の土砂降り。
征十郎の制止を振り切って外へ出る。
バシャバシャと足元で水が跳ねる。
泣かない。泣きたくない。
熱かった体が雨に濡れ急激に冷えていく。雨粒に紛れて涙が頬を伝う。
「っう・・・」
兄ちゃんはもういない。アメリカに向かった。
泣かないって約束は、守れなかった。
「白崎!戻れ!」
「!征、十郎・・・」
ガシッと腕を掴まれて、前に進まない。
泣いてる顔を見られたくなくて、征十郎に背を向けた。
「白崎、」
「ごめん。足手纏いな奴でごめん」
「白崎!・・・何があった?」
「っなんでもないよ・・・、ただ調子が悪いだけ。スランプってやつ?」
「嘘をつくな」
「・・・っう、征っ十、郎・・・」
やっぱり、征十郎には敵わない。嘘も簡単にばれてしまう。
「無理に話さなくていい。ただ苦しいなら無理して笑うな。」
ばれていたらしい。部活中の作り笑いも。
ギュッと、抱きしめられた。
後ろから、力強く。
征十郎の匂い。汗の匂いも混ざった征十郎の、安心する香り。
「征十郎・・・あのね、」
お父さんのことを、ゆっくりと泣きながら話した。その間も、あたしを包む腕の力は緩まない。
あたしが話し終わったころには、雨が小降りになってきて、二人で少し震える。
「風邪、引くかもな」
「そう・・・だね」
「白崎、」
「ん?なに?」
体育館に戻ろうと、征十郎の腕を解こうとしたのに征十郎は話さない。
「話してくれて、ありがとな。」
「・・・ありがとうはあたしのセリフだよ。聞いてくれてありがとね。もう、大丈夫そう」
「・・・白崎、」
「だから何」
「好きだ」
・・・え、
好き?誰が?誰を?
「俺は白崎が好きだよ。こんな時に不謹慎だが」
「っ」
冷え切ったはずの体が、熱くなったのがわかる。
考えたことがなかった。
誰が誰を好きなのか、あたしは誰が好きなのか。
「白崎は?」
「ぇ・・・ぃや・・・あの」
告白された上に、この体制はきつい。
恥ずかしすぎて死にそう。
顔から火が出るって、こういうことか。
「白崎はどうなんだ?」
あたしは誰が好きなのか。ちょっと考えたら簡単なことだ。
なんであんなに征十郎の匂いに落ち着いたのか。
なんであんなにドキドキしたのか。
風邪なんかじゃない。あたしは・・・
「あ、たし・・・
征十郎のことす「杏奈っち!」
征十郎に言おうとしたら、だ。
思わぬところに邪魔が入った。
「なっ赤司っちなんで杏奈っち抱きしめてるんスか!?」
「黄、瀬?」
「りょっ」
ヤバい。征十郎のオーラがヤバい。
人を殺しかねないぞこいつ。
「離れるっス!監督怒ってるッスよ!あいつらはどこに行った!って」
「・・・黄瀬」
聞いたことのないような、低いドスのきいた声があたしと離れた征十郎から聞こえた。
「せっ征十郎!早く戻ろ!」
征十郎の背中を押す。
このままだと、本格的にヤバい。
「・・・し・・・杏奈、」
「!?なっ」
征十郎が、あたしの名を呼ぶ。「白崎」じゃなくて「杏奈」と。
涼太も、ビックリしている。
「部活のあと、部室にいろ」
「・・・はい」
やばい。
心臓が破裂しそうだ。
・・・お父さん、あたしもう絶対泣かない。
絶対に、優勝を持ち帰るよ。