二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:  皓々と照る月 【REBORN】 ( No.30 )
日時: 2012/08/30 13:00
名前: なゆ汰 ◆TJ9qoWuqvA (ID: mxpCGH6q)

 何で、何で。こんな目にあわなきゃならない。どうして。急いで教室に駆け込む。息を切らして、周りを見渡せば、驚いたように目を大きくする京子ちゃんの姿があった。ああ、京子ちゃん。わたしは、何でこうも非凡なのだろう。京子ちゃんみたいに、平凡で、可愛い、普通の女の子になりたかったのに。何で。雲雀恭弥の、憎々しげな表情でいったあの言葉が、頭をぐるぐる廻っている。ずるい。ずるいよ、ねえ。何で全部全部わたしばっかり。わたし、何か悪いことしたか。

 今まで、耐えてきた涙が。もう泣かないと、誓ったはずなのに。強くなると、誓ったはずなのに。



「京子、ちゃ……」
「…っえ!? だ、大丈夫!? ユウちゃん…!」



 弱音を吐いてもいいか。涙を流してもいいか。今だけは、京子ちゃんを憎ませてくれないか。普通に毎日を過ごす、京子ちゃんを憎ませてくれないか。京子ちゃん、大好きだ。京子ちゃんはいい子だ。けど、わたしも普通でいたかったよ。京子ちゃんみたいに普通でいたかった。わたしのことを理不尽だって怒鳴ってくれてもいい。大嫌いだって罵ってくれてもいい。だから、今だけは憎ませて。恨ませて。この運命を。普通に生きていける、京子ちゃんを。


 ごめんね、京子ちゃん。本当は、大好きだ。けど、そうやって何をしなくても平凡な人生を送れるところ、大嫌いだ。ううん、違う。大嫌いなんじゃない。うらやましいんだ。

 京子ちゃん。わたし、わたし。



「……もう、疲れた……。」
「……っ!! ユウ、ちゃ…!」



 京子ちゃんの表情が、心配の色に変わる。京子ちゃんにぎゅっと抱きつくと、後ろから沢田たちの声が聞こえた。そして、なぜかリボーンくんの声。その声に、より一層涙は大粒の雨になって流れていく。

 やめて、くれ。わたしを、わたしを非凡に染めないでくれ。その切実な思いが、わたしの手を、足を、体を、小刻みに震えさせた。その異変に気づいた京子ちゃんが、大声で叫ぶ。わたしの名を、呼ぶ。



「ユウちゃん…!? しっかりして! ツナくん……! どうしようユウちゃんの様子が可笑しいの! 震えてる……!」
「えっ……!? 東城さん!?」



 ああもう、五月蝿いな。そんな大声で、呼ばないでくれ。わたしの視界がぼやけていく。京子ちゃんの制服をぎゅっと掴みながら、頭の中に響く正体不明の破壊音をひたすら聞き続ける。



「……、っ」



 口内で血の味がして、つーっと唇の端から血が流れていった。ああ、終わった。なぜか、そう思った。



「これはやべぇ……。精神が崩壊寸前だ! ツナ! シャマルんとこに運べ!」



 リボーン、くんの声が、遠、い。そのとき、わたしの視界は、真っ黒に、なっ、た。



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