二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: D.gray-man -存在の証- ( No.86 )
日時: 2012/07/08 17:19
名前: 快李 (ID: qs8LIt7f)

         第十四夜 -仲間外れの-


 この世界の何処かに、一匹のアクマがいる。そのアクマは潮風にあたりながら砂場座り、周囲を警戒しながらも手にある小さなビンを見つめていた。中には羊皮紙が入っており、文字が書いてある。

「...」

 アクマは静かにそれを海に流した。羊皮紙に書いた内容を思い出しながら。
 「この世界の何処かにいる我が息子へ。きっと怒っているだろうな。でも...嫌われていたっていい。私はお前をずっと探している。いつか会うときが来るかもしれない。が...私は決して名を名乗らない。遠くから見守っているぞ」
 アクマは瞳から血色の涙を流した。足元の砂がみるみる血色へと染まっていく。小さなカニやヤドカリは逃げ、アクマだけその場に立ちすくんだ。

「ルーク...」

 巻き戻しの街はもう朝になり、この前と変わらぬ情景となっていた。ルークはその街をただ歩き回り、途方に暮れていた。

「もしあの三匹がお父さんだったら」

 全てのアクマを警戒していた。誰がお父さんなのかもわからない。写真も何もないので、思い出しようがない。もしイノセンスが記憶を戻してくれたら...。

「戻してやろうか」
「!?」

 脳内に直接聞こえてきた声。聞いたことのある、懐かしくて、怖い声。

—イノセンス...?

「そうだ」

—何のよう?

「記憶を戻したいか」

—別にいいよ

「...そうか」

 たまにイノセンスは、ルークに内密で命令を下している事がある。さっきの命令...「アレン・ウォーカーに命令。2時間以内にルークの元へ戻る。命令に従わなかったら罰を与える」というのは、イノセンスが下した命令だった。

—イノセンスって名前ないの?

「ない」

—付けてやろうか

「いらん」

—わかった

「...」

 仲間のアレンとリナリーがロードに襲われていることにも気付かずに、ただ呆然と街中を歩いているルーク。もうすぐ命令をして2時間が経つ。どんな罰を与えるかは、全てイノセンスが決める。ルークは決めることが出来ない。

「命令に従わなかった為、切り傷の罰を与える。アレン・ウォーカー」

 ルークに意識はなく、イノセンスがルークの体内に入り込んで罰を下した。もちろんその時に、イノセンスはルークの記憶を餌にして食べる。その為、ルークは覚えていない。イノセンスが勝手に命令を下している事を。
 かつて闇のイノセンスと呼ばれた、一つだけ仲間はずれのイノセンス。この歴史はある二つの一族しか知らない。