二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:     疾走少年、  [ 黒バス/長篇 ] ( No.48 )
日時: 2012/08/07 11:48
名前: さくら (ID: noCtoyMf)
参照: http://www.kakiko.cc/youtube/index.php?mode

05.





 今日、放課後に黄瀬君が隣のクラスに言って篠原さんを呼び出しているのを目撃した。キスといい、本当私は見たくないものを見てしまうようだ。
 同時にやっぱり黄瀬君と篠原さんは別れてなかったんだ、どうせ今日は部活の練習見に来ないかだとか、帰り一緒に帰らないかだとかを伝えに行っていたんだと思う。
 本当、リア充爆発しろ。あの噂はデマだったらしく、他の男子も「やっぱアイツ等付き合ってんじゃん」って二人を見てニヤニヤしていて無駄に殴りたくなった。

 あの噂は、私にとって微妙な噂である。二人が別れていれば、黄瀬君に片思いの私にとって都合が良い話だし、逆に別れていれば私の失恋という気持ちを踏み躙られているようでとても居心地悪かった。


「はあ、本当に私にはベランダの花の水遣り係りが似合ってるんだ」


 正直、放課後の誰も居ない教室ってのは凄く居心地が良かった。

 夏でも冬でも、ベランダの花は綺麗だし、夕日が差し込む教室は凄くロマンティックだった。




 だから、今日も何時もの様に小さいジョウロを片手に水遣りながら話しかけていたんだ。花に。




「ああ、君は本当に綺麗な色をしているね」

「そうッスね。因みにその花俺の花なんスよ?」

「うん。黄瀬君の花は、花まで凄い綺麗な黄色をしているよー!」


 と、其処まで言い終えて考えた。

 “因みにその花俺の花なんスよ”、“黄瀬君の花”、“黄色”?そして後ろから聞こえる男子にしては少し高い声。
 それは私が何時も舐め取る様に聞いていて「素敵ボイス」と称していた、あの黄瀬君の声だった。


「ぎょ、ぎょひいいいいいいいいいいいいいいいいいい」

「う、うわっ!ちょ、どうしてジョウロ投げるんスか!」

「き、きききき黄瀬君ッ!!??」


 其処に立っていたのは、私達平凡女子が愛してやまない“王子様”こと、黄瀬涼太くん本人であったのだ。
 驚きの余り手に持っていたジョウロを、自分でも驚くべき威力で投げてしまったが、バスケをしている黄瀬くんはすんなりとそれをキャッチしてしまった。
 その行動をとっても格好よくて、見とれてしまったが、それより先に同様が走って、妙に焦り黄瀬くんの名前を呼んでしまった。

 焦り過ぎたろ私のバカ。異常に不自然過ぎて変に思われたらどうすんだ、バカ。

 ごめん、ごめんなさい!と謝り、一人落胆している私に、黄瀬くんは思わぬ行動をとった。


「ふはっ、アッハハハハハ!!!全部声に出てるッスよ白李さん!別に俺白李さんの事変に思ってないから安心して下さいッス!」

「は、はあ、」

「もう、本当白李さん面白いッスね!!」

「・・・・・え?」

「ん?」


 黄瀬くんは、え?俺何か変な事言った?みたいな表情で此方を見てくる。

 い、否!その前に!!その前になのだよ!!!
 彼は今私の事を何と呼んだか?白李さん。そう、HAKURISAN!!覚えててくれたし、名前覚えててくれたし!


「だから声に出てるッスよ。もう同じクラスになって半年経とうとしてるんすから、覚えるッスよ」

「え、でも私みたいな地味虫を?平凡女を?」

「謙虚過ぎっ。同じクラスの白李サクラちゃんッスよね!ちゃーんと名前まで覚えてるんスから」

「な、なななな名前までっ!」

「ちょ、何で泣くんすかー!」


 黄瀬くんと話していると、時間が経つのを忘れる位楽しかった。あれ、でも今日部活は?篠原さんは?
 聞こうと思ったけれど、何より聞いたらこの楽しい時間が壊れてしまう気がして、何となく、聞けなかった。

 何より、今まで半年とこの同じクラスで過ごしてきたのに、私は黄瀬くんを見てるばかりで話した事が一度も無かったから。
 この時間が人生で一番輝いて見えた。


「白李さんは、毎日放課後に残って一人でベランダの花に水やってるよね。皆がしない事を黙って引き受けたり、凄い優しい子だなって思ってたんスよ」

「私、花好きだし。それに幾ら皆がしたがらない事でも、皆の役に立てるって気持ちが良いんだよ?」

「優しい子ッスね、やっぱり」


 君は恰好良いよ。
 すると黄瀬くんが手伝うと言い出したので、二人で話しながら花の世話をしていた。

 二人でするから水遣りも早く終わって、もっとこの時間が長くなれば良いのにって思った矢先に、


「白李さん、また来ても良いッスか?俺サクラっちの事気にいっちゃった」

「うん!良いよ。黄瀬くん本当に面白いね。待ってる、から。それと、なまえ、」

「あー、駄目だったッスか?こっちのが呼びやすいんで、俺はサクラっちが良いんスけど」

「ううん、全然!寧ろ呼んで下さい!」

「ははっ、やっぱ面白いッスね」





 05:{ 彼のアリスはバラ色のティラミスを食む }



240807
 5話目でやっと接点が出来ました。